by Umi Yamaguchi
”西東京を代表する暴れん坊” と言えば誰だか分かるだろうか。八王子を拠点とするハードコアサウンド SWEETSOP(スイートサップ)。結成18周年を迎え、初のONE SOUND DANCE『イキザマ』 が2020年11月22日、大安の日に渋谷THE GAMEにて開催された。3月1日に告知されてから8か月半、新型ウイルスにより世情が大きく変動したが、来場者全員にオリジナルマスクを配るなど満を持して行われた今回のワンマンイベント。ALL DUB PLATEの選曲で観客を休む暇なく躍らせ、大盛況となった。ワンマン終了直後、SWEETSOPのMC, SELECTORであるSHIN-Gへ話を伺い、その濃厚な夜をドキュメント。

東京・渋谷にて行われたONE SOUND DANCE『イキザマ』は、活気付いた街を追い風に17時開演。結成2周年を迎えた関東のサウンドMASTER BRIDGEがオープニングアクトを務め、会場を盛り上げた。最終曲、RUEEDの『おまたせ』で熱気を高め、SWEETSOPへと繋ぐ。
登場したSHIN-Gが最初に放ったDAMIAN “JR. GONG” MARLEY & STEPHEN MARLEYの『MEDICATION』は観客を一斉に揺らした。
「俺の生き様と、俺の音を聴きにきた奴!」という掛け声に暴れん坊の肩書きを見る。と同時に「Powって言って。声出すのが気になるようだったらライターつけてくれ!レゲエの灯火は消えない!」と、このご時世ならではのMCも垣間見られた。19時を迎える頃には会場は満員となり、KENTY GROSS、MINMI、RYO the SKYWALKER、SHINGO★西成など、SWEETSOPが誇るジャパニーズアーティストのDUB PLATEを披露し、より勢いを加速させた。
勢いそのままに、ゲストとして TACH-B、TAITANG、ADACHIMAN、T-MAN、たなけんなどのスポットライブへ。彼らの濃厚なオリジナルスタイルが会場に染み渡る。
中盤ではA.R.P『THE LION SLEEP TONIGHT』を皮切りに、MARCIA GRIFFITHS『MY BOY LOLLIPOP』などのFOUNDATION TUNEや、SLENG TENG、DUCK、SICK、RULE IN THE DANCEHALL STYLEなどのRIDDIMに乗せたDUB PLATEを中心にプレイし会場を沸かせた。
JUMBO MAATCH、TAKAFIN、BOXER KIDの『3 THE HARDWAY』をかけると、「来月出るマイジャの20枚目のアルバムに、SWEETSOPプロデュースの曲が入る。サウンドを始める前から聴いてたアーティストのアルバムに自分の曲が収録されるのは感慨深い」と語った。(そんなMIGHTY JAM ROCKの20枚目のアルバム『3 THE HARDWAY XX』は12月16日リリースされており、SWEETSOPプロデュースによる楽曲『STILL BURN』がNG HEAD & JUMBO MATCHの最強タッグで収録されている。)
DJブースには、盟友である亡きレゲエディージェイMACKA-PEEとの写真が飾られ、幾度か彼への想いが語られた。その度にNEVER DIE STYLEな彼の笑顔が思い浮かぶような、そんな空気感に包まれていた。
15周年の際も実施した『#SweetsopとみんなのDUB』企画は今回も開催。応募された名前を入れオリジナルDUB PLATEを録音、当日プレイするというこの企画だが、今回はTAK-Zの新曲『La La La La La』で収録、披露された。
「急遽リハーサルに機材を持って遊びに来た」というNATURAL VYBZもHUMAN BEATBOXを披露。そのビートにのせてラバダブが行われた。その後、自己紹介8バース企画「RUB A DUB TRAIN」に参加した面々が、それぞれのバースを歌う。全く8バースでは収まらない たなけんにかき乱されつつ、終始笑いが絶えない盛り上がりを見せる。
最後は「曲で全部伝えるから」と想いを込めたDUB PLATEを披露。導楽「BE ALRIGHT」、PETER MAN「ヤツの物語」、EXPRESS「LIFE」、笑連隊「ありが10匹」の4曲で締めくくった。観客は耳を傾け、思い思いに灯りを灯し、大盛況のままONE SOUND DANCE『イキザマ』は終演した。
【ワンマン終了直後の SHIN-G インタビュー】
− BUZZLE MAGAZINE(以下BM):まずは、お疲れ様でした。今回のワンマンを3月1日に告知してから8ヶ月半、その間に世の中がぐるりと変わったと思いますが、その中でやはり葛藤もあったのでしょうか。
SWEETSOP :ありがとうございます。ワンサウンドダンスに関してはもちろん葛藤もあった。だけどやれるなら必ずやる、自分からはやめない。最悪、箱が都の要請で営業できませんってならない限り、中止は考えなかったかな。今回のワンマンもそうだし、コロナの中でも「こうやって対策すればレゲエの現場をキープできる」っていうモデルケースになれば。だからそこが自分たちでマネージできない規模になっちゃうと、100%大丈夫とはなれない。まあ元々100%はないんだけど。『キセキ』(6月に開催予定だった野外イベント)に関しては、ちょっと自分たちが人数的にマネージできないから、来年のことも考えて中止にした。今回のワンマンは、ネガティブな中で少しでもポジティブになってもらおうって考えて、オリジナルマスクを配ったり。店だけじゃなくて、ちゃんと俺も自分にできることしようって。色々考えた上で自分が出来る限りの新しいモデルケースとして、「こういう感じでやったらうまくいくんじゃないかな」って感じでやらせてもらったっすね。
− BM:会場でも、オリジナルマスクを写真に収めている方を何人かお見かけしました。
SWEETSOP :うんうん。なんか一体感もでるしね。サポーターとかファンの子も嬉しいと思うし。マスク配ってあの値段でやったら赤字です、みたいな感じだけど(笑)
− BM:今回のワンマンへの想いを「劣等感とコンプレックスに打ち勝つため。誰かの誇りになりたい」と語られてましたが、その想いはずっと抱えていたものだったんですか?
SWEETSOP :うーんとね、なんか俺は自分が引っ張っていくっていうより、INFINITY16のTERA-Cだったり、湘南乃風とかにお世話になって引っ張ってもらってた側。でもそれがある時からすごいコンプレックスになっちゃって。先輩の力で俺は粋がってるだけなんじゃないかとか。まあサウンドクラッシュとかもいっぱいやったけど、相手ありきじゃん。
− BM:相手がいるからこそ、ですもんね。それは相手からしても。
SWEETSOP :うん。サウンドクラッシュっていうのはさ、勝ったり負けたりで気持ちは消化できるんだけど。やっぱり普段のこう、SWEETSOPの活動の中で劣等感がいつも付きまとって。例えば今回のダンスで『キセキ』みたいに豪華メンバーの中で盛り上げても、もちろんそれはそれで有難いことなんだけど、自分の中で満足できない。「借り物のお客さんを盛り上げてる」っていう、ちょっとネガティブな思考なのかもしれないけど。どんなに鬼ボスしても、俺の中ではその感覚が否めない。やっぱりそれがここ2〜3年、自分の中で打破できないで悩んでたこと。
− BM:ずっと溜めていた想いを消化するために。その消化しようと決めたキッカケはあったんでしょうか。
SWEETSOP :そうだね。やっぱり「HAN-KUNすごい」「JUNIOR君すごい」。じゃあ「おい、お前どうなんだよ」って聞かれた時に、俺はこうなんだっていう名刺がないとダメだなって思って。BANTY FOOTのJUNからも「お前いつワンサウンドやるんだよ」ってすごい言われんの。JUNは俺と同い年なんだけどさ。俺は「いやー来年かな」とかずっと言い続けてきて。で、2019年の年末にBANTY FOOTのワンサウンド見にいって、帰りの高速で「俺もやりてえな」って。そこから年明けて、真赤赤じゃんCREWのタータンに「今年どうすんのー?」って聞かれた時に「今年は作品作って来年くらいにワンマンやろうかなー」って俺は言ったんだよね。あいつも俺がビビッてるの見透かしてたんだと思うけど「来年の話は俺してないからさ。来年やるなら別に、作品頑張って」って言われちゃって。俺の中ではその一言がでかかった。
− BM:後押ししてくれる環境があったんですね。
SWEETSOP :俺も来年また「来年やる」って言ってんじゃないかって思って。先延ばし先延ばしっていうのに釘を打たれて、今年やるっていうのを決めた。
− BM:終わってみてその葛藤や想いはどうでしょうか?
SWEETSOP :やっぱり達成感。まあ俺の中では集客も合格ラインだった。でも箱をもっとパンパンにするには、自分も実力つけたほうがいいし足りないものもあるよ。ラバダブもスポットライブも見てもらって分かったと思うけど、自分より下の世代でやった。自分もひとつ成長できたし、彼らにもいいもの見せれたかなって。でもまあ課題は大きいよ。結局サウンドやってて、満足する日なんてこないんだよなかなか。たぶんそれがきちゃったら終わり、引退の時だと思う。「もっとこうできたな」っていうのを永遠繰り返し。今回ワンマンは反省点も踏まえて合格ラインだったかな。
− BM:コロナになってから、久々にああいうみんなが踊っているダンスを見れたので楽しかったです。ジャパニーズもかけてっていう、ALL DUBのイベントは。
SWEETSOP :そうだよね。なんかでもこういうスタイルでやるサウンドってあんま東京にいないからさ。ジャパレゲもかけてファンデーションもかけてジョグリンもかけて、みたいな。俺自身はオールプレイヤーみたいな、そういうのを目指してるから。もともとサウンドクラッシュ専門でやってたんだけど、色々やってみたら楽しかったっていう。
− BM:自分が楽しんでたらお客さんも楽しいというか、結構伝わるものですよね。
SWEETSOP :そうそう。だから今回俺の中のテーマでは、自信持ってやることと、楽しむことだったから。それは出来たかなって思うけどね。
− BM:最後に「俺は言いたいことを曲で伝えるから」と言ってかけた4曲がありましたが、あれはもう最初から決めて?
SWEETSOP :そうあれはね、最後の4曲だけは決めてた。導楽の一番最初にかけた曲は、感謝を伝える曲の中でも俺が一番好きなやつ。俺導楽好きだしね、仲いいし。PETER MANのダブは、サウンド人生の物語だからやっぱりワンサウンドで一番良い時にかけたい。でEXPRESSの曲もリリック的に、今回のイキザマと自分の人生で掛け合わせてる部分はあって。最後の笑連隊の曲とかは結構昔から持ってるダブ。15周年の時もそうだし、大切な時の最後はあの曲をかける。だからなんだろうな、リリックを今回重視して決めた。まあ導楽とかは今回のために撮り下ろしてくれて。まあセレクターだしね。ジャパニーズレゲエをかける意味って「言葉が分かる」ってとこだからさ。
− BM:このワンマンを終えて、今後の活動方針や目標はありますか?
SWEETSOP :47都道府県を回りたいと思ってて。行ったことない県とかもあるからさ、今度は自分が足を運んで。「人がやってないことやれよ」ってすごいTELA-Cに言われんの。俺と同じことしないほうがいいよって。さっきと少し矛盾しちゃうけど、でも俺はJUNIOR君にしろTELA-Cにしろすごく影響を受けてるから。あの人たちがやったことと同じ道を辿りたいし、俺の中で経験として納得したい。その中でオリジナルなことを追求してやればいいと思う。今が18年目、2022年が20周年だから、今はそれに向けての動きかな。20周年どういうスタイルでやるか、その時にビッグダンスで沢山のゲストアーティストを呼んだとしても劣等感を感じないでやりたい。
− BM:「上の方に揉まれてきた」とおっしゃってましたが、今回のワンマンも下の世代の方が多く見えたので、巡り巡ってそんなSWEETSOPさんから影響を受けるかもしれませんね。
SWEETSOP :そうそう。俺も彼らから影響を受けてるしさ。INFINITY16が湘南乃風を輩出してあれだけビッグになって、RED SPIDERがMINMIを輩出してあれだけビッグになって。ずっと恩恵にあやかってばかりじゃしょうがないからね。自分自身で第2の湘南乃風を排出していかなきゃなって思うから、やっぱり若い奴らを見ていかなきゃいけないなって。自分が地に足つけて等身大のアーティストとして出すっていうのをすごく考えてるかな。なんて偉そうなこと言ってますけど(笑)
− BM:「下の世代にスポットを当てつつ、自身のスタイルを見せて確立していく」ということですね。
SWEETSOP :そうそう。だからJUMBO MAATCHさんやNG HEADさんと曲やったのも「後輩にちゃんとかっこいい俺たち見せましょうよ」って。俺らはレゲエレペゼンして、ブレずにレゲエ見せましょうって。まあトレンドもあるし、よその畑はよく聞こえるよね。でもDAMIAN MARLEYとかって、ザ・レゲエをやりつつ、レゲエの筋を通してるからヒップホップからもフィーチャリングのオファーがくるわけじゃん。ブレない。そういう所を意識してほしいね。レゲエとしてフィーチャリングしたいって思わせないとね。DAMIAN MARLEYはやってんだもん、他ジャンルのアーティストとさ。
− BM:レゲエの良さを伝えていって、もっと浸透していったらなと思います。
SWEETSOP :ね。現場でももちろん、WEBサイトとかで発信していくのもすごくいいと思うよ!
※ワンマン開催から14日後、会場からの来場者感染報告は無しと確認済
SWEETSOP ~musical murder~

2002年、SHIN-G (MC & SELECTOR & PRODUCER) により結成された東京を代表する “ 暴れん坊 ” HARD CORE SOUND。
男気溢れるMCとオリジナリティ溢れるDUB PLATEを武器に全国各地で活動中。
SOUND CLASHを得意とし、様々なSOUND CLASHに参戦しその頭角を現す。
2008年、横浜レゲエの聖地【exBodega】で行われたSOUND CLASH『NO BIAS』では完全なアウェー戦にも関わらず圧倒的なPLAYで見事優勝を果たす。
2009年、結成7年目にして【川崎 CLUB CITTA’】でANNIVERSARY DANCEを敢行し超満員のもと大成功を納めた。
2012年、自身のレーベル『SWEETSOP MUSIC』をスタート。
日本を代表するレゲエアーティスト『HAN-KUN』『MUNEHIRO』『NG HEAD』を迎えた【BIG THING RIDDIM】を皮切りに現場感に徹底的にこだわった楽曲は多くのオーディエンスの人気を博している。
2014年、神戸で行われた日本中が注目を集めるBIG SOUND CLASH『WAR! WAR! WAR!』でも見事優勝を果たしその地位をゆるぎないものとする。
2016年、日本最大級のSOUND CLASH『JAPAN RUMBLE』にも参戦。
2017年、10月8日に東京のクラブの聖地【渋谷HARLEM】で15th ANNIVERSARYを敢行し大成功を納める。
2020年、11月22日には自身初のワンマンを【渋谷THE GAME】で開催し大成功を納める。
SOUND CLASHからBIGフェスまで盛り上げるSWEETSOPの暴れん坊スタイルを現場で体感せよ!!
【Booking & Info】sweetsopsound@gmail.com
【Instagram】@sweetsop_shinji
【Twitter】@SWEETSOPsound
Interview & Text:Umi Yamaguchi