Interview & Text by AKI
ジャンルレスに様々なトラックを乗りこなし、枠にとらわれないスタイルでシーンの中でも異彩を放つレゲエディージェイ SHOWGA(ショウガ)。レゲエ激戦区として知られる大阪の現場でスキルを磨き続けてきた彼が、2022年に発売予定のフルアルバムからの先行曲を収録したEP『The Sun』をリリース。今回はEPのテーマや、ネット社会が発展した現代ならではの制作方法、そしてこれまであまり語られてこなかった活動初期から現在に至るまでの経歴を語ってもらった。

ちょっと歌書いてみようみたいなノリで
− BUZZLE MAGAZINE(以下BM):ジャンルレスなスタイルからも感じられるように、レゲエだけをずっと聴いてきたわけじゃないんだろうなと思うんですけど、自身の音楽的な歴史というか、どのジャンルから聴き始めて今レゲエをやってるみたいな、流れとかから聞けたらなと思うんですけど。
SHOWGA:キッカケは、中2ぐらいの時にEMINEMの「8 Mile」でカルチャーにどっぷり入った感じですかね。色々耳にしてたんですけど、EMINEMに衝撃食らって。同時ぐらいにSEAN PAULとかめっちゃ流行ってた時があって、ヒップホップとかレゲエとか『What’s Up』みたいなコンピアルバムとか、いろんなやつ聴き漁って。それから高校入って、ビートボックスをずっとやってたんですよね、3年ぐらい。有名でもなんでもなかったんですけど、ストリートで1人でアンプ出して、駅の前でやってるみたいな。
BM:ヤバいですね。
SHOWGA:当時モバゲーっていうSNSが流行ってて、15秒のビートボックス動画を上げてるコミュニティがあって。それの大会みたいなのがあったんですけど、たまたま決勝までいってもうて、決勝でヒカキンと戦ってボロ負けしたっていうエピソードがあります(笑)その頃からヒカキンは圧倒的に1人だけ上手かったです。その時もずっとヒップホップを聴いてたっすね、高校の時は。
BM:レゲエを聴きだしたのはいつからなんですか?
SHOWGA:高校卒業する時ぐらいに、RED SPIDERの「緊急事態」っていうワンマンダンスの音源が地元で回りだして。サウンドマンとかセレクターっていう文化知らんかったんで、DJはスクラッチしたりクールに回すもんや思ってたのが、めっちゃ罵声言ったり、お客さんいじってるのに衝撃食らって。それからタンテ買って7インチを集めだして、サウンド始めた感じですかね。
BM:最初はディージェイじゃなくてサウンドだったんですね。
SHOWGA:いろんなダンスのアーリーとかで回させてもらってて。その頃、TONY MATTERHORNとかFIRE LINKSとか、サウンドマンが歌うのがちょっと流行ってた時期だったんすよ。
BM:ありましたね。
SHOWGA:かっこええなと思って。俺もちょっと歌書いてみようみたいなノリで、サウンドプレイ中に歌ってみたりとかしてたんすけど、その時期にパソコンが潰れて回されへんくなって。そんでもう歌うしかないなみたいな感じで、先輩のスタジオの「へそ曲がりスタジオ」っていうところに駆け込むような感じでお邪魔して。そこにRAM HEADとかがいて「ええやん、歌いや」みたいな感じで言ってくれて。こっちの方がしっくりくるなっていうのがその段階でけっこうあって、それで歌いだしました。
BM:「しっくりくる」っていうのは、サウンドの時よりも周りの反応がよかったとかってことですか?
SHOWGA:そうっすね、単純に。そこのスタジオでずっと活動してたんですけど、スタジオがなくなってみんな散り散りになって。あてもなく地元に戻ってきたときに、DUKE君とDIZZLE君もちょうどニューヨークから日本に帰ってきたタイミングやって、色んなガイダンスがあって今に至るっていう感じです。
*DUKE… SHOWGAの所属クルーTEAM BLOCKAのマネージメント兼裏方担当
*DIZZLE… TEAM BLOCKA所属アーティスト

まずは「陽」の部分をリリース
BM:活動初期の頃は、ブランニューのR&Bのオケに合わせて歌ったものをSoundCloudにアップしたりしてましたよね。
SHOWGA:そうっすね。それで『HELLO』がキッカケになって知ってくれる人も多くなったって感じですね。
BM:それからしばらくシングルリリースが続いて、今回EPを制作することになったキッカケはなんですか?
SHOWGA:僕自身が、シングル単位で曲を聴くっていうよりもアーティストのアルバムを作品として聴きたくて。作品の流れとかがあるじゃないですか。そういう流れも込みの作品を作ってみたいっていうのが始まりなんすけど。最初はフルアルバムにしようっていう話をしてて、でも色々話してるうちに、これは2枚に分けて出そうみたいな。理由は、アルバムとしてあんまりまとまりがないなって。「陰」と「陽」のバランスが極端すぎるというか、別々で出した方がいいんちゃうかっていう話になって。それでまずは「陽」の部分のリリースっていうことで『The Sun』っていう名前つけたんですけど。
BM:ということは、後々もう1枚EPをリリースする予定ですか?
SHOWGA:そうっすね。年明けぐらいには出せるなって感じですかね。その2枚を出した後に、ライブではよく歌ってるけどまだ音源にしてない未発表曲を何曲か入れたやつを盤にしようかなっていう。
BM:デラックスバージョン的な。
SHOWGA:はい。
BM:ツアーとかリリパも考えてるんですか?
SHOWGA:同じクルーのEXPRESS君もアルバム出したんで、一緒に回れたらなとか、いずれキンスト(Kingstone Lounge)でワンマンとかもやりたいなっていうのは、密かに思ってます。キンストは昔からレギュラーもやってて、学んだことも多いし、コロナとかありましたけど、なくならないで残ってくれてホントよかったです。

ネガティブなマインドをポジティブに消化
BM:今回のEPを聴いて、使っているトラックがオーバーグラウンドに振り切ってるなと思ったんですけど、トラック制作は誰にお願いしたんですか? それと、トラック選びでこだわってる部分とかってありますか?
SHOWGA:僕はけっこうビートリーシングで選ぶ(ビート販売サイトでライセンス契約をする)ことが多いっすかね。そこから海外のトラックメーカーとかとも知り合っていけるんで、世界は広がっていくっすね。
BM:そうなんですね。直接海外のトラックメーカーに連絡を取って?
SHOWGA:そうですね。世界中のトラックメーカーが集まるサイトがあるんで、そこでディグしてリンクしてって感じですね。最近はけっこう多くなってきたんちゃうすかね。ジャパニーズヒップホップとか聴いてても「あ、このオケ聞いたことある」とかけっこうあるっすね。いろんなものを常々聴いてるんすけど、YouTubeのタイプビートをずっとイヤホンで流しながら歩いてたりとか、スケボーしてたりするっす。このトラックええなっていうのが出てきたら、そこでもうザザッてリリック書いてまうっていう。
BM:おもしろいですね、その作り方。リリックを書く時に意識してることも教えてほしいなと思うんですけど。
SHOWGA:リリックでこだわってるのは、ネガティブなマインドをどう消化してポジティブに持っていくかみたいな。ネガティブをネガティブのまま出すっていうのも一つのアートの形としてはかっこいいと思うんですけど、俺個人の作品ではどこかしらポジティブに消化したものを出したいなっていう感じですかね。
BM:『HELLO』の歌詞への引用から見られるように、ブルーハーツからの影響も大きいですか?
SHOWGA:そうっすね。特に甲本ヒロトからはめちゃめちゃ影響受けてるっすね。難しいことをいかに簡単に言うかっていうか、ストレートに出すかっていうか、そういうとこはスゲえなって思うっすね。

BM:SHOWGAさんは今後はオーバーグラウンドを意識した活動をしていくんですか? レゲエ以外のリスナーにもたくさん聴かれるような。
SHOWGA:そこを目指してます。直属の先輩がEXPRESS君で、音楽で飯食ってる人なんで、やっぱそこに憧れはスゲえあるっすね。
BM:そういう曲も増えてきてますよね。ダンスホールをメインに他のジャンルのエッセンスも上手に入れていくみたいな。オールジャンルのイベントとかでDJがプレイしても違和感なく聴けるというか。
SHOWGA:うんうん、そうですね。でもバトルとかラバダブ至上主義みたいな人たちもおれば、ホンマにスタイルは様々やと思うし、全部含めてそれが大阪の色やと思うから。いろんな色があっておもしろいし、そういう人たちのラバダブ見てたら、刺激になるっすよ。
BM:それでは最後に、読者の皆さんに一言お願いします。
SHOWGA:2022年はファーストアルバムをリリース予定です!ライブでお会いしましょう!
The Sun

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