【インタビュー】ACEMARK | ジャマイカのトップアーティストTOMMY LEEのアルバムに参加

Interview by Luma
Text by Luma & BUZZLE MAGAZINE 編集部

ジャマイカのダンスホールシーンを牽引するアーティストの一人 TOMMY LEE SPARTA のニューアルバムに、日本人アーティストの ACEMARK がフィーチャリングで参加。そのセンセーショナルな活躍は、日本のダンスホールシーンにおいて2021年を代表するニュースとなった。自身が生まれ育った長崎県の壱岐島という離島と同じように、カリブ海に浮かぶ島国ジャマイカの音楽に魅せられた彼が、小さな島から海を越え世界へ届けた楽曲『Sayonara』に迫る。

TOMMY LEEが逮捕されちゃって

− 今回のACEMARKさんの功績は今年(2021年)のトップニュースの一つだと思います。どういった経緯でTOMMY LEEとの楽曲制作に至ったんですか?

ACEMARK:今年の3月にジャマイカに行った時、MEDZのGACHA君と一緒に制作活動していて、ジャマイカのアーティストとも1曲やりたいって考えていて。

− 以前にもGACHAさんのプロデュースで、ジャマイカンアーティストのMASICKAとのコンビネーションソング『BUSS DEM HEAD』をリリースしていますよね。

ACEMARK:そうですね。『BUSS DEM HEAD』に次ぐ第2弾をジャマイカ滞在中に作れたらと思ってアーティストを探していたら、たまたまTOMMY LEEとコラボする機会がもらえたって感じですね。

− 上手くタイミングが合ったんですね。ということは、元々はACEMARKさんの作品にTOMMY LEEを客演として迎える予定だったということですか?

ACEMARK:はい。自分がジャマイカ滞在中にEPを制作してて、その中の1曲になる予定でした。曲ができて、僕がジャマイカから帰るタイミングくらいかな、TOMMY LEEが逮捕されちゃって。まあ、異例の事態になりまして(笑)捕まった後に向こうのマネージャーから連絡があって、今なら製作中のアルバムに楽曲を入れる段取りができるって言われて。

− 突然の展開ですね。

ACEMARK:曲を聴いたときにTOMMY LEEのリアクションが良かったみたいで、向こうのアルバムに入れたいっていう流れになりました。日本語をコンセプトで作ったから、その部分で気に入ってくれたのかなとは思ってます。アルバムもストーリー仕立てで制作しているみたいで、そのアルバムの起承転結の結の部分で使ってもらった感じですね。

日本語でフロウをパトワ語みたいに

−『Sayonara』がリリースされて、ジャマイカ人の方々からのリアクションはどうでしたか?

ACEMARK:一瞬だけ曲がYouTubeにアップされて、何故か今は消えたんですけど、その時のコメント欄はかなりいいリアクションだなと感じました。今回はパトワ語で歌っているわけではなくて、日本語で歌ってるのが響いてるんじゃないかなと思います。

− 日本語で歌っているのは、自身のEPでリリース予定の作品だったという部分が大きいですか?

ACEMARK:そうですね。全部英語だと日本の市場では分かりづらいだろうと思って。あとは、あの楽曲の中でTOMMY LEEの見た目いじりをしているんですよ。彼ってブリーチとかもしててアジア人みたいな見た目なので。

− サビの部分でも女性のヴォーカルで “Weh you come from(どこから来たの?)” ってフレーズが入ってきますよね?

ACEMARK:そうですね。その部分で「ジャマイカから来たの?日本から来たの?」って言ってて。ジャマイカ人ってお金持ちの中国人が多いですし、TOMMY LEEの “LEE” も中国の名字だったりして、何かとアジアと繋がりもあるので。あの女性のフレーズが入った状態で音源が送られてきた時に、アジア人とかけ合わせたいんだなぁって感じましたね。なので、カタコトの英語よりは日本語でバッチリ決めにいって、フロウでパトワ語みたいにハメたほうが面白いなと思いました。

− リリックの内容を簡単に教えていただけますか?

ACEMARK:ちょっと悪い男の曲ですね。一回セックスはするけど、俺のことは忘れてくれみたいな。ちょっと強気な姿勢の男の歌です。恋愛のお別れというよりは、そういった意味の “Sayonara” ですね。TOMMY LEEの歌詞は過激すぎて訳せません(笑)

− そうなんですね(笑)この楽曲を制作する上で特に意識したことってありますか?

ACEMARK:それこそ、向こうのリリックの雰囲気のまま日本語で制作しちゃうとグロすぎちゃうので、日本人らしい言い回しは意識しましたね。

まだ言えない海外とのアーティストとのコラボ

− 他にも海外のアーティストとのコラボ楽曲はあるんですが?

ACEMARK:今リリースされている分だとTOMMY LEEとMASICKAのみですね。曲自体は他にもあるんですが、まだ言えない状態ですね。

− MASICKAとの共演の際はどういった経緯で進んでいったんですか?

ACEMARK:当時、GACHAくんがNEW GENNAっていう企画をしてて。ZENDAMANとかも出てきたばっかのときで若いアーティストをフックアップしてたんですけど、その時の『NEW GENNA』っていう曲でジャマイカのアーティストとコラボしたいよねって話で上がったのがMASICKAでしたね。

− 元々は『NEW GENNA』っていう曲でリリース予定だったんですね。

ACEMARK:そう。しっかり日本語の曲で、間のバースにMASICKAを入れようって話だったんですが二転三転して。MASICKAが送ってきたバースがかなり良くて、それに応じてパトワで別のリリックで録り直しました。なのでBUSS DEM HEADのオケで2曲出てるんですよね。

− そうだったんですね。あの曲を使って台湾のダンサーも踊っていたり、グローバルな広がり方をした印象です。

ACEMARK:あの曲はオケがダンサーにハマったのかなって思うんですけど、MASICKAの当時の勢いも重なって凄いことになりましたね。ジャマイカってよりは、世界中のレゲエ好きに広がったっていうイメージです。それでまた他のダンサーさんが注目して使ってくれて、奇跡的な広がり方するんやなって思いましたね。

− ここ数年GACHAさんとの動きが多い印象ですが、GACHAさんとの出会いを聞いてもいいですか?

ACEMARK:ジャマイカに行く前にMEDZのチャリ (CHALLIS) さんに出会って「もうすぐジャマイカに行くんですよ」って伝えたら、マリエさん (BAD GYAL MARIE) とかGACHAさんいるから訪ねたら?って言ってもらって。それで訪ねて、自分の音源聴いてもらって、昔から憧れがあったので一緒に曲やりたいですって伝えて。

− ACEMARKさんから見て、GACHAさんはどんな方ですか?

ACEMARK:なんやろな、謎に満ちてるじゃないですか。みんなの前でそんな多くを語らず黙々と作業するタイプというか。広い視野で物事を見てる人だなっていう印象はありますね。ZENDAMANとか見ててもわかると思うんですけど、やっぱプロデューサーとしての才能みたいなのをすげえ感じますね。

− 他にコラボしたいアーティストやプロデューサはいますか?

ACEMARK:VYBZ KARTEL。それが叶う時までに次のステージに上がっていたいです。自分自身の影響力で、カーテルを知らない人にもダンスホールキングはこの人なんやっていうのを伝えれるとこまでいきたいなって感じですね。

ニューダンスホールしたい

− ACEMARKさんの印象として、5年前ぐらいから雰囲気がガラッと変わったなって感じてて。自分自身、変化の起点になったと感じることなどありますか?

ACEMARK:まず10年前ジャマイカに行った話になるんですが。当時ジャマイカ行く前は、憧れの対象が日本人のアーティストだったりして。もちろんジャマイカのアーティストも好きだったんですけど、80年代、90年代が好きな若者で。でも、実際10年前にジャマイカに行ったらVYBZ KARTELが鬼ボスしてたんです。カーテルはカーテルで昔のレゲエを今に持ってきている感じっていうか、昔のラガマフィンスタイルを現代風に体現しているのを見て、俺もニューダンスホールしたいなって思って。

− なるほど。

ACEMARK:でもまあ、クラシックも根底に置きつつじゃないと薄くなってしまうので、温故知新なスタイルを受け継いだ状態で新しいスタイルに挑戦したいなって思った時期が7年前〜5年前ですね。当時周りにトラックメイカーもいなかったので、新譜のリディムが出たらそれを使ってとりあえず曲作りまくって、セレクターがジャマイカのブランニューダンスホールと並べてかけられる日本人みたいな部分を意識しました。

− ジャマイカのダンスホールは曲をリリースするスパンもかなり早いですよね。

ACEMARK:そう。その感覚も見習いたいなと思って突き進んでいましたね。でも、ここ2, 3年は原点回帰というか、しっかりレゲエやろうかなと思って。次のEPには『KAYA』みたいなワンドロップの曲も入ってますね。やっぱりGACHA君の音使いも上手くて、意識して新しさを取り込んでくれるんですよね。今ってクラシックのスタイルが若い世代にもトレンドになってきてるなって感じる部分もあるので、そこをもう一回見つめ直しながら制作していますね。

ダンスホールを知らない人たちに影響を

− ディージェイ活動をする上で、今後の目標などはありますか?

ACEMARK:周りからの僕の印象は、ジャマイカ人とよくコラボするアーティストっていう感じだと思うんですけど、そのイメージをレゲエ界だけじゃなくてヒップホップや他のジャンルの人に届くまで活動を幅広くしたいです。ジャマイカ人のアーティストとコラボすることで、ダンスホールを知らない人が知るキッカケになると思うんですよね。そういう意味で、自分がしている活動が今までダンスホールを知らなかった人たちに影響を及ぼせられるようなディージェイになりたいです。

− その目標を視野においた、ACEMARKさんの今後の動きについて教えていただけますか?

ACEMARK:本当は今頃にはEPをリリースする予定だったんですが、TOMMY LEEとの楽曲の件でずれこんでしまってて。年明けの2月頃にEPをリリースする予定です。自分も地元の壱岐島(長崎県)に帰ってきて3年になるので、改めて地元からバイブスを発信するような内容になっています。

− 地元壱岐島では普段どんな活動していますか?

ACEMARK:壱岐島では飲食店を経営していて、自家焙煎のコーヒーを作っていたり、ジャマイカ滞在のときに教えてもらったジャマイカ料理なんかを出しています。僕がレゲエにビビッときた理由が、小さい島の人間なので同じ島の音楽として憧れを感じて好きになったので。そんなジャマイカの活発さを壱岐島にも巻き起こしたいなと。

−「壱岐島レゲエ祭」もかなりの規模感でムーブメントを起こしているなって思いました。

ACEMARK:壱岐島レゲエ祭も年1回でやっていたんですが、コロナの影響でなかなかできていなくて。自分も壱岐島に帰ってきて状況も変わっているので、できることもどんどん変わってきていて、来年とかはバンドを呼んで生音でトライしてみたいなっては思っています。

− 最後にBUZZLE MAGAZINEを見ている方々に一言お願いします。

ACEMARK:BUZZLE MAGAZINEをご覧の皆さん、ダンスホール最高です。レゲエってやっぱ、ネガティブの中からポジティブになれる音楽なんで、どんな状況にいてもハマると思うんですよ。だから、その不屈の精神を音楽からキャッチして、こんな世知辛い世の中ですけど、一緒にバイブス上げていきましょう。

Sayonara

KOKOKARA

2022年2月5日 CD & デジタルリリース

ACEMARK

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