【インタビュー】AXE from EMPEROR | -TO DI WORLD- 世界で活躍する日本人

Interview & Text by BUZZLE MAGAZINE 編集部

“世界で活躍する日本人” にスポットライトを当てたインタビューシリーズ「TO DI WORLD」。今回はニューヨークに在住のセレクターAXEにフィーチャー。日本を代表するサウンドの一つEMPERORに所属しながらも単身アメリカに渡り、現地のトップサウンドたちの中でサバイブを続け4年、2022年を迎え待望の一時帰国を果たした。地元大阪を皮切りに全国各地を回るジャパンツアーを直前にインタビューを敢行し、ニューヨークレゲエシーンのリアルを聞かせてもらった。

− ニューヨークに住み始めたのはいつからですか?

AXE:ちょうどハタチの時なんで、えーっと… 2018年の4月からですね。成人式が終わって少ししてからって感じです。気付いたらもうすぐ4年になります。

− ニューヨークに行こうと思った理由は?

AXE:もともと、ジャマイカとかニューヨークのサウンドのライブ音源が好きでずっと聴いてたんですよね。それで海外のシーンに強い憧れがあって、いつか実際に住んでみたいなって思ってました。初めて海外に行ったのは17歳の時のジャマイカで、とにかく何もかもが衝撃的だったんですけど、当時好きだったサウンドがニューヨークにもたくさんいて、次はニューヨークも見てみたいなって思いました。

− そこからただ行くだけじゃなく、住んじゃおうっていう行動力がすごいですね。

AXE:住んだ方が色んな経験ができて、学べることもたくさんあるんじゃないかなと思って住むことにしました。ニューヨークは音楽以外にもいろんな夢を持った人たちが世界中から集まってて、ニューヨークで成功すればどこでもやっていける的な話も先輩たちから聞いてて。

− 17歳でジャマイカに行って、20歳でニューヨークに移住って年齢的にかなり早い方ですよね。セレクターを始めたのはいつなんですか?

AXE:中学校3年生の時ですね。レゲエっていう音楽には偶然出会って、そのままの勢いでセレクターもやることになるキッカケもあって。レゲエを聴き始めたのとほぼ同時に始めたっていう感じです。

− EMPERORに加入したのは?

AXE:ニューヨークに行く前の年で、2017年ですね。もともと、EMPERORがやってた「尼爆」っていうレギュラーダンスに自分も違うサウンドとして出てて、ずっとお世話になってて。その時やってた自分らのサウンドが解散して、そっから1人で活動してた時に「入らへんか?」って声かけてもらって。ニューヨークにも行くつもりやったし、最初はなかなか踏み切られへんくて1年間ぐらい話し合ってたんですけど、好きにやっていいよって言ってもらえたんでEMPERORとしてやっていこうって思って入ることに決めました。

− アメリカって、DJとかセレクターがちゃんと仕事として扱われてるイメージなんですが実際にはどうですか?日本だとお金を稼ぐためにやってるわけじゃないっていう人も多いと思うんですが。

AXE:日本でやってた頃と比べると、仕事っていう意識はかなり強くなりましたね。ちゃんとお金が発生するからこそ、スベってたらクビになるっいうのもあるからミスはできへんし。毎日のようにスケジュールが詰まってると「今日も行かなきゃ」って思うことも正直あるし… 普通に仕事ですね。もちろん楽しいし嫌っていう気持ちではないですけど。

− レゲエっていわゆる黒人社会だと思うんですけど、その中で日本人として仕事を掴んでいくのはかなりハードそうですね

AXE:人種の違いで悔しい想いをすることはめちゃめちゃあるっすけど、自分だけ日本人やし、目立つから逆にインパクトを残しやすいっていうのもありますね。自分次第で良い方にも悪い方にも転ぶというか。日本人らしくハンブルでいるのを忘れないことも大事やけど、逆にハンブル過ぎてもおもんないヤツやなって思われるからガツガツいくようにもするし、そのバランスは心掛けてますね。

− BM:セレクターの人だったり、現地に在住の日本人同士の繋がりはありますか?

AXE:ありますね。自分は積極的に繋がりたいって思ってます。僕がニューヨーク来る前からずっと住んでる先輩やったり憧れてた人にいろんなことを教わるっていうのは、すごい大事にしてます。

− ニューヨークっていろんな人種の人が集まる街だと思うんですけど、レゲエのパーティーはジャマイカ人の人がほとんどなんですか?

AXE:同じレゲエでもいろんなコミュニティがあって、ほとんどジャマイカ人しかいないパーティーもあれば、ジャマイカ以外のカリブの国の人のパーティーもあるし、白人の人というか人種がミックスでやってるパーティーもあるし。たくさん種類があって、それぞれ遊び方も全然違いますね。かかってる曲が違うかったりとか、ビッグチューンの価値観も違ったり。

− なるほど。ひとえにレゲエって言ってもいろんなパーティーの楽しみ方ができるのもニューヨークならではですね。

AXE:そうですね。ニューヨークのレゲエのパーティーっていうと、レゲエ50%ヒップホップ50%みたいな印象を持ってる人もいると思うんですけど、ジャマイカと同じような90%レゲエっていうパーティーももちろんあるし、ホントに種類がたくさんあるんで。SoundCloudとかで聴ける一部のパーティーの音源で、それだけがニューヨークのシーンだと思ってほしくないなっていうのはありますね。

− プレイする側としては、現場ごとに対応できるスキルが必要になってきそうですね。

AXE:自分はブロンクスを拠点に、クイーンズ、ブルックリンのローカルのパーティーからマンハッタンのアップタウンのパーティーまで色んな現場でやってきたんですけど、それぞれ盛り上がる曲も違うし、曲の掛け方とか選曲の内容も全然変わってくるんで、臨機応変に周りをよく見て頭を切り替えれないと出来ないですね。特にローカルのパーティーに来る若い姉ちゃんは選曲に厳しいです。よかった日はとことん褒められて、ダメだった日はめちゃくちゃ冷たくされる(笑)

− 日本と比べるとどんな違いがありますか?

AXE:日本だと時間が決まっててプレイ前に選曲したりすることもあるんですけど、ニューヨークだとプレイ時間も長いし、その時のお客さんの反応を見ながらかける曲を決めていくって感じです。レゲエのパーティーで言うと、日本は出演者が主役で、ニューヨークはお客さんが主役っていうイメージですね。日本はサウンドのショーケースを楽しむ的な遊び方で、ニューヨークはもっと誕生日を祝ったりとか、お客さんが主体ですね。

− ニューヨークのダンスホールシーンで今人気のセレクターといえば誰ですか?

AXE:ブロンクスでよく一緒にやってるジャマイカ出身のCHUKULOO 4STARは、若い世代の中では圧倒的に支持されてますね。TECH XIIっていうDJもジャマイカ出身で、ヒップホップ多めのシーンというか、ちょとまた別のフィールドでめっちゃ活躍してます。あと、2人でやってるDJ KIDD x ENTOURAGEも世界のトップクラスですね。プレイもファッションも人間的にも明らかに違うなっていう。サウンドで言えばBROADWAYが人気ですかね。

− 曲は何が流行ってますか?

AXE:SKENG、INTENCEとかのヤングアーティストの曲はもちろん、ちょっと前に出たMASICKAの新しいアルバムは店でもパーティーでも頻繁に耳にしますね。ダンスホール以外で言うと、去年ぐらいからまたアフロビーツが勢い乗ってる気がします。TikTokから流行り出す曲が多かったりしますね。

− アトランタ、マイアミ、ロサンゼルス、ヴァージニアなど他の州のパーティーにも出演されてましたよね。ニューヨークとの違いを感じることはありましたか?

AXE:やっぱりそれぞれの州出身のアーティストの曲がよくかかったりするし、アトランタはトラップ発祥の地だけあってトラップがよくかかるイメージですね。マイアミはパーティー感が強いというか、ジャマイカのアップタウンっぽいプレイするサウンドが多いイメージで、ニューヨークは特にMCのチャットがメインのサウンドが多い気がします。

− 今回の一時帰国の目的は?

AXE:ニューヨークに行ってから4年経って初めて日本に帰ってきたんですけど、日本のシーンでやってた時の感覚がどんな感じやったか今思い出せなくなってて、それを思い出したいっていうのと、ニューヨークでやってきたことを日本でどうフィットさせれるか試してみたいっていうのもあります。コロナでちょっとタイミング悪いんですけど。

− 来月にはニューヨークに戻るとのことですが、完全帰国の予定ないんですか?

AXE:今はまだないですね。今回の一時帰国でもう一回改めて日本の感じを見て、今後自分がどうしていくのかの参考にしたいとは思ってます。

− 大変なことも多いと思うんですが、それでも居たいと思えるニューヨーク魅力ってどんなところですか?

AXE:一個一個の規模がデカイ気がしますね、得れるものも、失うものも。上手いこといったらとことん上手くいくし、ダメならとことん落ちるし。チャンスっていうか、可能性が無限大で何が起きる分からなくて、常にワクワクできる街かな。今はまだこれからもニューヨークにいたいなって思ってます。あと、飯の種類が豊富なんも好きなとこですね(笑)

AXE from EMPEROR

【Instagram】@axe_emperor
【Twitter】@axe_emperor

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