【インタビュー】RAM HEAD『DAY & NIGHT』| 音楽で人生に彩りを

Interview by Luma
Text by BUZZLE MAGAZINE 編集部

音楽をジャンルでカテゴライズするのはナンセンスかもしれない。RAM HEADの作品を聴くと、いつもそう思わせられる。メロディアスなフロウと人間味に溢れたリリックはレゲエシーンの中でも異彩を放ち、自然体で飾ることのないある種の「ユルさ」が聴く者を惹きつける。ヒットメーカーDIGITAL NINJAが全面プロデュースを務めた待望のニューアルバム『DAY & NIGHT』は、彼の自由な感性で昼と夜のコントラストのように移り変わる感情が表現され、インタビュー中の言葉通り「音楽で人生に彩りを」与えてくれる。

テーマは陰と陽

− 今回のアルバムのタイトルは『DAY & NIGHT』ですが、全体を通しての具体的なテーマはありますか?

RAM HEAD:今回のテーマは陰と陽。ネガティブな部分とポジティブな部分、やっぱり両方があっての人間だし、自分自身も両方の感情を持っていて。それをアルバムで表現できたらいいなと思って『DAY & NIGHT』にしました。

− 陰の部分を表現した曲と、陽の部分を表現した曲、それぞれが収録されているということでしょうか?

RAM HEAD:そうです最初は12曲のアルバムを昼編と夜編で2枚出そうとしてて。全部で24曲で、1日の24時間を表現する予定でした。イメージとしてはだんだん朝から昼、夜へと進んでいく構成で。でも最後の入稿前に全部通して聴いてみようって時に、スタジオにPERSIAが来て774くん(DIGITAL NINJA)と3人で隅々まで聴いたんですよね。

− PERSIAさんはたまたま来たんですか?

RAM HEAD:そうですね。それでその場では「いいね」ってなったんですけど、後日PERSIAから「もう少し曲削ってみてもいいかもしれませんね」って意見もらって。その案を774くんと話し合ってみて「じゃあ削ったバージョン作って聴き直してみるか!」って構成し直したら、1枚のアルバムとしてまとまってていいなってなって。もともと30曲くらいあった作品を24曲にして、そこから入稿直前に15曲くらいに激選するっていう作業が発生して、このアルバムが出来上がったていう感じですね。

− となると、PERSIAさんがその場にいなかったら全然違う売り出し方になっていたかもしれませんね。

RAM HEAD:そうですね(笑) 24曲の縛りも残したかったんですけど、実際15曲でも『DAY & NIGHT』の二面性がめちゃくちゃ表現されてるし、最終的に一番しっくりきましたね。

− いちファンとしては24曲バージョンも聴いてみたかったです(笑)ジャケットのデザインや内容も、既存のダンスホールやレゲエにとらわれていない作品になっている印象です。

RAM HEAD:僕もそうですし、774くんもそうなんですけど、やっぱりブラックミュージックが大好きで。ベースや歩んできたカルチャーはレゲエにありつつも音楽に対しては自由に取り組んでて。特に774くんとタッグを組む時は、ヒップホップの要素とレゲエの要素がミックスされているビートを選びがちですね。なので意識したというよりかは、自然ととらわれていない作品になっていると思います。

− もともとそういった考え方だったんですか?それとも、アーティストとしてある時期を起点に考え方を変えたなどはありますか?

RAM HEAD:もともとジャンルにはとらわれていないかもしれません。中学の時はストリートでアコースティックライブしてたり、地元の小樽もヒップホップのシーンしかなくて。自然と歩んできている道はジャンルレスでしたね。でも、その中で一番心奪われたのがレゲエで。だからどんな歌を歌ってもレゲエを感じれる作品にはしています。根本的には、かっこいいと思えればいいかな。そこを素直にやっている感じです。前作のアルバム『LOVE SICK DISCO』もジャンルレスで、そこは今回も一緒かな。まぁ、とかなんとか言っておいて次は思いっきりラガなアルバムだったりしてね!(笑)

唇が気持ちいいかどうか

− 今回のアルバムの前には『 1 』から『 6 』まで6作品のEPをリリースされていますよね。その中の曲も何曲か収録されていて一連の流れを感じるんですが、アルバムリリースまでの経緯を教えていただけますか?

RAM HEAD:アルバムができるくらい曲が溜まったときに、774くんに「これ、EPでどんどんリリースするのはどうですか?」みたいなノリではじまって。

− かなり新しい売り出し方だなと感じました。

RAMHEAD:3曲入りで6枚出しているので、18曲。実験的な要素もあって面白いかなと。それでどうしても、3曲かな?今回の作品に必要な曲があってアルバムに起用させてもらいました。

− RAM HEADさんは曲の製作数が多いアーティストだと思うんですが、どれくらいの頻度で曲を書くんですか?

RAM HEAD:ノッているときは1日で数曲書いたり、1週間でEP1枚分できるときもありますね。逆に1ヶ月書かないときもありますし。いかんせん曲作るのが好きなんで、EPの為とかアルバムの為とかじゃなく、好きが転じていつの間にかたくさん制作できてます。

− 歌詞を書くときに特に意識していることはありますか?

RAM HEAD:うーん、意識していることかぁ…。唇が気持ちいいかどうかですかね(笑)

− 唇が気持ちいい?(笑)具体的に言うと、フロウとかメロディってことですかね?

RAM HEAD:基本的に、歌ってて唇が気持ちいい感じは崩したくなくて。「あさをたくさん燃やしてぇぇ♪」みたいな(笑)フロウの部分になるのかな?

− 分かった気がします(笑)あと、韻も大切にされているイメージです。

RAM HEAD:韻は、テンポやリズム感を出すために必要になっているっていう感じで。「4文字必ず踏む」みたいなこだわりっていうよりかは、リズムを出すためにやってるっていう感じですね。すごい感覚的な説明ですみません(笑)

ビートからのインスピレーション

− ミュージックビデオも出ている『あさをもやしては、日が昇るか昇らないかのギリギリの時間、穏やかにチルしている情景が思い浮かべられたんですが、この曲はそういった体験をもとに書いたんでしょうか?

RAM HEAD:基本的にそうですね。この曲はスタジオでビートを聴いた瞬間に、サビのメロディラインをフリースタイルで口ずさんだんですよ。それを横で聞いてた774くんが「めっちゃイイ感じちゃう? ウィズ・カリファみたいやん、録っとこうや」ってなって。ビートからのインスピレーションも曲を作る時に大きいと思います。

− ビートからのインスピレーションですか。『DESIRE』については「自分に嘘はつけない」や「走り出したら止められない」っていうストレートなメッセージが印象的ですが、こういった歌詞もビートからのインスピレーションで浮かんでくるんですか?

RAM HEAD:このビートはかなり都会的なイメージがあって、欲望が渦巻く街でサバイブするみたいな。「やりたいことをやりに来たんだろ! くじけるなよ」って、まだ頑張れるよって自分に対しての気持ちがこもっていますかね。

− 確かに「あれも食べたい これも食べたいって欲望的な部分を感じる歌詞もありますね。

RAM HEAD:そうですね。あれもこれもチャレンジするっていう欲望ですかね。やってできなければ仕方ないし、欲望のままに自然体で頑張れって感じですかね。

− アルバムの中から1曲、自身のお気に入りを挙げるとしたらどの曲ですか?

RAM HEAD:聴いてくれた人の中でも好きな曲が別れてて、僕も1曲に絞るの難しいんですが…。『ALL DAY』ですかね。この時はよくないことも続いていた状況で、そういう負の感情も曲に落とし込むことでいい曲にできましたね。あとはノリも好きですね、ビートのハマり方とか。

− 僕が個人的に好きな楽曲は『シャララなんですがこの曲歌詞の中で「誕生日が一緒」ってフレーズが出てきて。これって特定の人物に向けて歌ってますよね?

RAM HEAD:これは愛する人に向けた手紙みたいな。特定の人なんですが、そこは聴いている人に謎にさせたくて。色んな想像ができるように歌詞を散りばめてますね。実際照れくさいですし(笑)ご想像にお任せします(笑)

− わかりました(笑)ジャマイカをテーマにした曲のタイトルはJAMAICA 2006になっていますが、この数字の意味について聞かせていただきたいです。

RAM HEAD:この曲は初めてジャマイカに行った時にできた曲で。2006年にはできていた曲なんですよ。

− なるほど。かなり前に完成していた曲なんですね。

RAM HEAD:まぁビートも違うし、歌詞も少しだけ違うんですけど。初めてジャマイカに行って「ジャマイカ最高!」ってなってる曲で。最初は『JAMAICA』ってタイトルにしようと思ったんですけど、あの当時と今だとリリックの内容が変わると思ったんで『JAMAICA 2006』にしました。今ジャマイカ行ったら深いところまで描写していると思います。政治的なこととか。

− どうして今リリースなんでしょうか?

RAM HEAD:当時って曲を制作してもパッとリリースできる環境がなくて、忘れ去られていた曲というか。(今回使用した)ビートを聴いた時にメロディが思い浮かんで「あれ、これ聞いたことあるな?あの曲よかったよな!」ってなって、昔のノート漁ったら出てきて。それこそ若くて唇が気持ち悪いところがあったので、ちょこちょこ修正してあの曲になったって感じですかね。

かっこいいかそうじゃないか

− 前作も今作も全ての楽曲が774さんプロデュースですが、RAM HEADさんにとって774さんの存在とは?

RAM HEAD:地元のめっちゃ近い先輩みたいな感じです。やっぱり作品作るって、お互いこだわる部分があるじゃないですか。ファーストアルバムもDIGITAL NINJA名義ではないけど一緒にやらせてもらっている楽曲もあって。ずーっと一緒に仕事する中で、ぶつかったりも経ているので、地元は全然違うんですけど、超仲のいい地元の先輩って感じです。

− RAM HEADさんは客演を迎えた作品が少ないと思うんですが、あまりそういった制作はしないタイプですか?

RAM HEAD:ホントは客演とか上手く散りばめて豪華にやったほうがいいと思うんですけど。なにせいつも曲作ってると、そのまま最後まで完成させることがほとんどなんですよね。「(誰かが客演に)入ってくれたらいいけど、もうすでに1曲として出来上がってるしな」みたいなパターンがほとんどで。今回のP-PONG(『NEON』に客演参加)に関しては、スタジオにたまたまいて一緒に作って。アルバムのために作ったわけじゃないんですけど、この曲はアルバムに必要だと思って入れさせてもらいましたね。

− 先ほどビートからのインスピレーションで曲を作るっておっしゃっていましたが、プロデューサーから具体的な依頼が来たときはどうやって作るんですか? 例えばポジティブな感じで作って欲しいとか。

RAM HEAD:依頼の方法っていうのも様々で、ビートだけ渡されて自由に作れる時もあれば、STEADY MUSIC(レーベル)ではこういう感じのこと言おうよって歌詞も一緒に考えたりしてもらうこともあって。まぁ歌詞のこと言われるのも平気だし、最終的には意見を取り入れるのも自分で裁量するから、その部分にはストレスは感じませんね。なるほど! やってみようか! ってポジティブに受け入れて、好きなようにできていますね。

− 逆に譲れない部分とか、大切にしていることってありますか?

RAM HEAD:楽しくやれることですかね、やっぱり。僕は作品の全部が全部リアルである必要はないと思っていて、フィクションの楽曲でもかっこいいと思いますし。あんまりこだわらないことが大切だと思ってますね。これは僕の弱点でもいいところでもあると思うんですけど。あー… でも、こだわるところはこだわるからなー…(笑)

− 今日インタビューをさせてもらっていても、音楽に対して自然体で向き合われている印象を受けます。なので、その都度こだわる部分も変わっているんですかね。

RAM HEAD:そうなんですよね。「これだけは!」みたいなのは無いかもしれません。かっこいいかそうじゃないかは気にするけど。1つだけやらないことは、人のことをとやかくいう曲かな。聴いている人が嫌な気持ちになっては欲しくないから「あいつダサい」みたいな曲とかは作らないし、基本的に思わないですね。自然体に向き合うことと、人を傷つけないっていうことは大切にしているかもしれないです。

− 音楽だけでなく人として大切なことですね。今後の展望についても聞かせてもらえますか?

RAM HEAD:DIGITAL NINJAからも曲を出していくだろうし、それこそさっきのSTEADY MUSICからも出したりしていきます。自分のベストアルバムも出したいですね。あと、今は難しいんですがDIGITAL NINJAのメンバーでツアーとかもしたいです。

− どれも楽しみです。

RAM HEAD:あと長い目で見ると、ずっとかっこよく音楽で楽しいことしてるおっさんになってたらいいですね。50歳になっても楽しそうに音楽しているなっていう人に。「ようやってんなー」って思われるかもしれませんが(笑) 音楽で楽しく人生を彩っていけたらと思ってます。曲作るの好きなんですよね。まだまだ伸びしろもあると思ってるので、音楽でできることは全部やろうと思っています。

− 今日はありがとうございました。それでは最後に、BUZZLE MAGAZINEの読者の皆さんに一言メッセージをお願いします。

RAM HEAD:この記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。音楽は最高に素晴らしいので、好きな音楽聴いて人生に彩りを与えていきましょう! ネガティブなこともポジティブなことも好きなことで昇華して、人生を楽しんでいきましょう!

DAY & NIGHT

DANCE FLOOE feat. RAM HEAD
STEADY MUSIC

各種配信サービスリンク ▼
DANCE FLOOE feat. RAM HEAD – STEADY MUSIC

RAM HEAD

【Instagram】@ramhead_official
【Twitter】@chyniek

オフィシャルTwitterで最新情報をチェック!