【インタビュー】SHUN「A」| 東のギャルチューンマスターから東のエースへ

Interview by Luma
Text by BUZZLE MAGAZINE 編集部

ディージェイクラッシュ「COMBAT」への出演や、ワンバースチャレンジのバズなど、パンデミック下においても歩みを止めることなく数々の話題を生み出してきたアーティストSHUN。注目の若手と言われてきた彼も今年でキャリア10年目を迎え、今では関東のレゲエシーンに欠かせない存在となった。3作目のフルアルバムとなる今作「A(エース)」では、得意とするダンスホーソングだけでなく、これまでの作品と比べメッセージ性の強い楽曲が多く収録されているのが印象的だ。「東のギャルチューンマスター」の異名で知られてきた彼が、タイトル通り「東のエース」という看板を背負うべく、次のステージへと新たな階段を登り始めた。

− ニューアルバムリリースおめでとうございます。まずは、今回のアルバムのタイトル「A」に込められた意味について教えていただけますか?

SHUN:読んで字の如くなんですが、「エース」という存在でありたいといった意味。そしてアルファベットの最初の文字なので、自分的には初心に返るというか、好きでやっているっていう部分を思い出しながら作品を作ろうと思いまして。

BUZZLE MAGAZINEでは前作のアルバム「PYROMANIA」のリリース時にもインタビューさせていただきましたが、今作と前作で異なる点や特に意識して制作した部分はありますか?

SHUN:思い返すと「PYROMANIA」は急いで作ってたなぁという部分があって。実際、CD版とデジタル配信版両方のリリースで曲数も凄かったですし。でも今回は自分でも全て納得行く形で、自分の好きなことを、好きな感じで作っていこうかなという。「A」っていうタイトルは先に決めていたんで、それに劣らないような作品を作ろうと意識しましたね。

− 今回のアルバムの半年前にはCORN HEADさんとのEPもリリースしていて、曲の制作頻度が早いですよね。

SHUN:いや、自分の中ではリリース時間が空いている感覚で。今まではめちゃくちゃ量を作ってたけど、ただ急ぐだけでは良くないなと気づきましたね。

− 一つ一つに時間をかけるということですね。制作する際に特にこだわっていることはありますか?

SHUN:とりあえずずっと意識しているのは、1, 2回聞いただけでメロディとワンフレーズを覚えてもらえるようにすることですね。歌詞も、まずは肝となるフレーズを作ってから枝分かれしていくことが多いです。他だと、もちろんジャマイカのレゲエとかダンスホールを意識して制作するのも大切なんですけど、今まで生きてきて聴いてきたJ-POPだろうが、ヒップホップだろうが、何だろうが、聴いてきた音楽の全てで培った感性も僕は無かったことのようにはしたくなくて。それも詰め込もうと思ってて、今回も色んな音楽をミクスチャーした感じになってますね。

− 確かに今回のアルバムもメロディ含め覚えやすくて、ライブでもみんなで歌うイメージが浮かびました。全体的にもまとまっていて、アルバム通して中だるみせずサクサクと聴けました。

SHUN:今回は12曲っていう曲数もあって、密度を濃ゆく完成させることができましたね。他に今までと違う部分だと、コロナの影響で自分のマインドが変わってきていて。みんなに会えなくなってライブも吹っ飛んだり、自分は一人じゃ何もできないなって感じて、改めて周りの大事さに気づいたり。不要不急って言ってましたが、やっぱり自分にはダンスホールしかないなとか。

− コロナ禍で見つめ直すことができたんですね。

SHUN:自分は今まで、ギャルチューンとかでチャラチャラしているイメージがあるなと思って。コロナの経験から人間臭い部分も見せていきたいって強く思うようになりました。

− そうですよね。今回は今までよりコンシャスな曲が多いなという印象でした。僕の中では正直、このインタビュー始める前にテーマが勝手に決まってて。「東のギャルチューンマスターから東のエースへ」っていう(笑)

SHUN:そうですね。ギャルチューンマスターやめたぐらいでもいいですよ(笑) もちろん今まであるものは自分の経験の中でリアルだから歌いますけど、ギャルチューンひとつとっても、チャラついたものから、もっと愛を伝えるようになってきたり。もちろんギャルチューンもやりますけど、今回のアルバムは気持ちを全面に出す人間臭い部分が含まれています。真っ直ぐなディージェイからしたら普通のことかもしれませんが。

− 今回興味深いなと思った楽曲があって。『レベチ feat. POWER WAVE』なんですが、もともと「COMBAT DEEJAY CLASH」で対戦相手だったPOWER WAVEさんに対してのディス曲ですよね? ディスした相手と改めて一緒に作り上げるって面白い取り組みですね。

SHUN:そうですね。『レベチ』はもともと一人で作ろうと思ってたんですよ。曲自体も気に入ってて、イメージとしてはジャパレゲの2000年代をイメージしてて。MIGHTY JAM ROCKとか、CORN HEADとか、当時の雰囲気を作り上げたかったというか。あのイケイケだった時代の雰囲気のオケにハマると思ったんで、TOMI-Oさんに作ってもらって。ただ作っていくうちに、もう 1 つガツンとくるワンバースが欲しくて。やっぱり当時の雰囲気の令和版だと、POWER WAVEかなと。元対戦相手っていうストーリーも面白いし、思いつきでワンバース、ワンフック録った状態で送ったんですよ。それを聴いたPOWER WAVEが「正直クラってます」って言ってくれて。二つ返事で快諾してくれました。

− COMBATというイベントだけの曲にするのではなく、その後楽曲として形になるのはいいですよね。他の楽曲の制作時についても触れていきたいんですが、まずはイントロからJIGGY ROCKのMASAYAさんが参加していますね。

SHUN:もともとENT DEAL LEAGUEの「DOWN TOWN MOVEMENT」っていうアルバムが好きでこの世界に入ってて。その 1 曲目のイントロがRACY BULLETのMCの呼び込みだったんですよ。そこに憧れがあって、僕がやるならMASAYAしかいないだろうと思って。ただ、MASAYAは寺の息子で、修行しに行かないといけない時期で2年間くらい修行に行ってたんですよね。けど時々、仮釈放じゃないけど山から降りてこれるタイミングがあって、そのタイミングでスタジオで収録してもらいました。

仮釈放(笑)

SHUN:状況的にも自由じゃなくて囚われの身だったんで(笑) VYBZ KARTELが捕まった時にガンガン曲リリースしていて、電話でレコーディングしてるんじゃないかって噂があったと思うんですけど、そんな感じで音質も寄せてやってみました(笑)

− ストーリー含めて音質もそこに寄せているんですね(笑) 次は、今までにないスタイルだと思うんですがシティポップの雰囲気のあるダンスホールソング『Shall We Dance?』はどうやって生まれましたか?

SHUN:TOMI-Oさんが80年代のANRIっていうアーティストの『Last Summer Whisper』をサンプリングしたトラックを作ってて。フレーズとメロディはすぐ浮かんだんで、そっから広げて制作していきましたね。感覚的には『ベイビーガール』の姉妹曲というか。

−『ベイビーガール』もそうなんですが、シティポップダンスホールっていう新しいジャンルと言ってもいい楽曲ですよね。

SHUN:そうですね。やっている人があんまりいないというか。シティポップと、レゲエとかダンスホール。アルバムには絶対に入れたいと思ってましたね。

− 次は『Venus』ですが、SHUNさんにしては結構珍しいというか、しっかりとしたレゲエなトラックですね。

SHUN:そうですね。割と久々にレゲエをやりましたね。この曲は生音に近いレゲエをやりたいと伝えたらTOMI-Oさんが4つくらい作ってくれて。僕の意見を大事にしてくれて、理想通りの曲になったと思います。

− 歌詞もとても興味深いですが、この曲は女の子に向けた曲ですか…?

SHUN:実はこの曲はギャルチューンではなくて、夢や目標にずっと片思いしてるっていう曲ですね。

− そうだったんですね。それこそSHUNさんらしさというか、オシャレな表現方法ですね。今回はレゲエだったりシティポップだったり、色んなジャンルが含まれていてチャレンジングだなと感じますが、壁になったなと感じた曲ってありますか?

SHUN:実は、このアルバムを制作する前にアルバムを作ろうと思ったことが2回ほどあって。1 回目は、色々あって曲がかけなくなる期間、考えすぎる期間があって。

− 色んなチャレンジがあって、時間が必要ですよね。

SHUN:僕は意外と感覚じゃなくて時間かけて書いていくタイプなんですけど、一曲が完成しないこともあるんです。それが原因で全然曲が書けない時期があって。でも「とりあえず書かないと何も始まらないよ」ってTOMI-Oさんに言われて。

− とりあえず動かないとって感じですね。

SHUN:そうですね。それで何も考えずに一回書いてみようと思って。「とっくのとうに」っていう曲があるんですが、曲通りの状態で書いてみて(笑) その状況を心を楽にして書きました。それがボツになるかどうかは考えず。そしたらTOMI-Oさんが、いいじゃんって言ってくれて。「あ、そうかこんな感じでもいいのか。もっと気楽に書いたほうがいいな」って思って。この曲ができるまではすごい壁だったんですが、割と何も考えなくても評判は良かったりして。「そういうもんなんだな、感覚で書くのも大事だな」って考えることができましたね。そこからは結構トントンと曲ができるようになりました。

− アルバムジャケットもシンプルで印象的でした。

SHUN:ありがとうございます。これいいですよね。最近多いじゃないですか、宇多田ヒカルのアルバムとか、ただの写真を使ったり。

− 確かに。アルバムのタイトルも背中に描くだけで表現してますね。

SHUN:そうなんです。写真自体は渋谷スクランブル交差点の都内を一望できるスポットで撮影して。今回は人間味を出したいっていうのがテーマだったので、装飾などはせずに。一発で人間味が感じれるジャケットにしてみましたね。エースを背負うっていうのをTシャツにペンキでAってだけ書いて表現しました。

− アルバムの楽曲の中にも『TOKIOっていう曲があるので、都内が一望できる場所から撮った写真なのもいいですね。地元は埼玉だと思いますが、東京には特別な思い入れがあっての楽曲制作ですか?

SHUN:元々、東京のことを歌った曲が好きで。アーティストを始めたのも東京だし、自分でも作りたいなと思って。それで、作るなら一緒に切磋琢磨してきたアーティストとやりたいと思って、客演はDoppelgängerにお願いしてますね。

− Doppelgängerさんについてもう少し詳しく聞いてもいいですか?

SHUN:GEMINIと2FACEの双子ディージェイなんですけど、お互い全然スタイルは違ってて。GEMINIは哀愁があって人間臭くて。2FACEはイケイケというか。それも各々のバースで垣間見えると思います。東京って色んな人が集まる街で流行の流れが早いんですよ。だから色んな人が消えてったりもするんです。東京はいろんな誘惑もあって、その中でレゲエやってる人とか愛おしくて仕方ないっていうか。

− そういった部分をリリックで「最高なTOKIO 最低なTOKIO」と表現されているんですね。

SHUN:そうですね。東京っていう場所に夢がある側面も伝えているんですけど、逆に厳しいところも包み隠さず伝えてて。それこそ最低な所はとことん最低ですが、いい所はとことんいいんですよ。そういう波の激しいところでやってやるぞっていう意味合いをこの曲には含めていますね。

アルバム自体、初心に還るっていうテーマがあるとおっしゃってましたよね。実際『TOKIO』という曲で自分自身の環境を振り返ったことも含め、ディージェイを始めた頃と変わったことってありますか?

SHUN:基本的には何も変わらないんですが、最初の頃は何も知らなくてすぐに調子に乗ってたなとは思いますね。ただ、自分が成長するにつれて広い世界が見えてきて、まだ小さい世界にいるなと感じることはありますね。最近特に感じます。それこそ色んな文化や畑がある東京にいるから感じれることでもあるなとは思ってて、だから調子に乗らずに頑張らないとなとは思いますね。ただ、最初から軸は全くブレてません。最初は夢でいっぱいだったけど、そこだけじゃない汚い部分も見えてきて。楽しいことだけじゃないなとは思いますね(笑)

−『おれはおれ』は唯一MVまで出ていますね。この曲はどういった経緯で制作に至りましたか?

SHUN:制作当時、自分の中で大きなチャンスが巡ってきそうだったんですけど、それが自然に流れてしまったりして。さらに広い世界を知って、一線の音楽業界の全体の壁の高さも知って、ちょっと落ちちゃってたんですよ。実際ライブもできてないから、セカンドアルバム作って、COMBATも出場して、ちょうどこれから行くぞって時にコロナがきてしまって。せっかく作っても流行の速さとか色んなものに正直面食らってしまって。

− うまくいかないことが続いたんですね。

SHUN:近くで活躍している人とか、夢を掴んでいる人は周りにいるのに、自分と何が違うんだろうって考えて落ちてしまうこともあって。でも、そもそも人と比べちゃうのはよくないなと。俺がやることは歌を作ってライブすることしかないから比べても仕方ないし、自分を高めることに集中しろよって。自分自身を鼓舞する曲のような感じがありますね。

− 今回のアルバムの中で、特に推し曲を挙げるとしたらどの曲ですか?

SHUN:全部好きなんですが、一番は『HELLO』ですね。コロナ渦で僕にはダンスホールしかないなって感じたことを詰め込んだ曲です。

−「生きるためにクラブに来た」ってリリックにもありますね。

SHUN:不要不急とかいう言葉が溢れていた頃で、僕の中では不要不急ではないって再確認できました。必要不可欠な場所。ただ、コロナでダンスから離れて必要不可欠じゃなかったなって気づいちゃった人もいると思うんですよね。どんどんフェードアウトしたメンバーがいて、遊ぶメンバーもガラッと変わって。でも「俺はここで待っているからいつでも戻ってこいよ、エースとして現場を守っていくから」っていう気持ちを込めました。

− 現場を守る存在はとても大変だろうなと思うのと同時に、やっぱりありがたいなと思います。このアルバムの最後の曲『踊り明かそう』でもダンスホールの大切さについて伝えていますよね。

SHUN:そうですね。今回やっぱり、自分が落ちている期間に周りの大切さに気が付きました。最後にシンプルにそれを伝えたいと思いました。サビのフレーズに「うねりあげるこんな世界をめまぐるしいこんな時代を踊り明かそう」っていうリリックがあるんです。こんな大変な時期に、それでも現場を守っていこうとしている。だからこそ、現場にいる人とか、リンクしてくれる人とかすごい愛おしいですよ。みんな大変だけど、みんな幸せにならないとねって思います。

− いつ誰がどういう状況になるかわかりませんもんね。

SHUN:そんな中でも遊びに来てくれてマジ大好きだなっていう。そういう気持ちが『TOKIO』あたりからストーリーが続いてて。東京で自分に自信がなくなった時、『Moon Light』で暗い道かもしれないけど歩いて行こうって思って。『おれはおれだ』って気づくことができて、最後にそれがあるのはみんなのおかげだよっていう。

− 東のエースとして、この先の未来をどう考えていますか?

SHUN:レゲエの中だけじゃなくて、もっと色んな人に聞いてもらえる世界を作りたいです。この10年間そこを目指してきました。とりあえず現状でもやってきた自負があるというか。3枚目のアルバムもリリースして、COMBATも出て、不本意ながらワンバースチャレンジでバズって話題とかも作ってきたつもりですし。曲も途切れさせずにリリースしているので、もう任せてくださいって感じです。レゲエの外に飛び出るだけじゃなくて、広い世界からお客さんを引っ張ってきたいっていう気持ちがあるので、もっと色んな人に聞いてもらって業界を盛り上げたいですね。

− ありがとうございます。期待しています。それでは最後に、見ている方々に一言いただけますか?

SHUN:聴いてくれた方も、まだ聴いていない方もいると思いますが、タイトルに恥じない活動をしていくのでよかったら応援してほしいです。

A

各種ストリーミング配信リンク ▼
SHUN – A

コロナ禍においても話題を提供し続け、作品リリースが待たれていた関東のReggae Deejay「SHUN」待望の3rdアルバムが完成!

近年では「東のギャルチューンマスター」の異名を名乗りつつもあくまでそれはDancehallの魅力の一つであると捉え歩み続ける様を、楽曲制作やLIVEを通して進化の片鱗を見せてきた。

その全容は代名詞であるTrack No.5.6のギャルチューンを始めリリカルなセンスが光るTrack No.4.7や未来への希望を歌ったTrack No.10等身大の自分を語ったTrack No.11など随所で感じるとることができる。

Feat.には、COMBAT3での激闘も記憶に新しい「POWER WAVE」を迎えYoutubeでも人気の楽曲を更に進化させたTrack no.3活動初期から共に切磋琢磨しあっている、関東の双子Deejayユニット「Doppelgänger」を迎えた東京賛歌なTrack no.9と同年代の盟友との楽曲を収録。

勿論、本作もRiddim制作を含むプロデュースは「TOMI-O from AK-MOVEMENT」が担当。キャリア10年目を迎え最早「SHUN」は ”期待の若手” や ”東のギャルチューンマスター” ではなく「東のA (エース) Deejay」であると、声高らかに宣言する必聴盤!!

【Instagram】@shunstagram1129
【Twitter】@nb_shun224

オフィシャルTwitterで最新情報をチェック!