【インタビュー】NASU『MEMBERS ONLY』| 本当に気持ち込めて作った作品

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Interview & Text by AKI

福岡を拠点に全国からコアな支持を集めている “THE LOCAL HERO” NASUが、ニューアルバム『MEMBERS ONLY』をリリースした。9曲で構成される今作は、誰もが聞いたことのあるジャマイカのファンデーションリズムのリメイクに始まり、レゲエにスカ、ダンスホールまで幅広いスタイルの楽曲が収録。彼らしい等身大のリリックで表現するのは、現在の世界情勢に対する想いを綴った曲や、自分の娘に聞いてほしい曲などテーマも様々だ。「必ず 1 曲は心に刺さる曲があると思います」そう自信満々に語る今作に込めた想いを感じて欲しい。

− 初めに、アルバムリリースに至るまでの流れを教えてもらえますか?

NASU:大阪にTOASTING JAMというレーベルがあって、まずはそこからシングルを1曲出すことになったんですよね。その時にいろいろとオケをもらって、せっかくもらってる以上はもらったものは返すじゃないけど、いろいろと曲を作ってたら「そんな感じでポンポンできるんやったら、うちからアルバム作ってみようか?」みたいな感じで向こうが言ってきてくれて、そこからですね。

− となると、作り始めからリリースまではすぐだったんですか?

NASU:それが、時間がめっちゃかかったんですよね。このアルバムを制作している間も他にもいろいろ作ってたので、1 年はかかってると思います。それに、レーベルともあんまり話も煮詰まらんかったけん、僕が勝手にリリパの日を先に決めて。リリース日も決まってないのに(笑) とにかくもうダラダラするのは嫌って思って、それに合わせてくださいって進めた感じですね。

リリースパーティーの時の様子

− 先行シングルとして出た『STILL』ですが、アルバムの中ではこの曲を境にダンスホールからレゲエへと雰囲気が変わる立ち位置にある曲ですね。この曲をシングルに選んだ理由はあるんですか?

NASU:理由があるかといったら特にはなくて…… ただ、1 年前にシングルを出そうって話だった時に作ってたのがこの曲だったんですよね。それでMVまで撮影してたしっていうのはありました。でも1年以上前に書いた曲やったけど、今思うとその通りになってるなっていうか。歌ってる内容は、誰もが歌うような内容やと思うんですよ。諦めない気持ちとか、ポジティブなメッセージのめっちゃレゲエな内容で。これまで17, 8年ぐらい歌ってきてて、原点回帰しとるようなトピックやけど、リリースした時ってちょうどサラリーマンを辞めて音楽一本になった時だったりして。自分へのメッセージソングじゃないけど、その歌通りの自分のタイミングで出せたなと思いましたね。不思議ですよね、人に「頑張れ」って言ってたけど、逆に自分が頑張らなって思わされましたね

− 最後の2曲の『I&I』と『MEMBERS ONLY』はどちらも心地よいミディアムチューンで、テーマとしては「人と人の繋がり」になっていますね。このテーマで曲を書こうと思ったキッカケはなんだったんですか?

NASU:『I&I』に関しては、たぶん昔から思ってるようなことやと思うんですよ。今ってみんなスマホばっか見てるじゃないですか。飲みに行っても「お前なにしに来とん?」って思う時もあるし、向き合う相手が違うと思って。画面の向こうに見えてるものが全部正解じゃないし。あんまりそんな画面と向き合わんでも、人と向き合ってたほうが多分いいことあるよっていう。なにか困った時って、ネットで調べると必ず答えが出てくるかもしれないですけど、僕は人と会って話した時こそ問題が解決することが多いなとも思うんですよね。特に僕は九州人やけん、その人の「人としての熱さ」を見ることが多くて。そういうのってSNSだけを見ててもわかるものじゃないしと思ってるので。

− となると、特に若い世代の人に聞いて欲しい曲ですか?

NASU:そうですね。中高生、僕の娘にもぜひ聴いてほしいです(笑) まぁ僕も困ったら助けてもらってるし、今日こうやってテレビ電話でインタビューできたりと必要なのは理解してるんですけどね。

− 『MEMBERS ONLY』もストレートなメッセージが刺さりました。

NASU:『MEMBERS ONLY』はオケを送ってもらったときに、ホント3分ぐらいで歌詞が書けたんですよ。作業しながらイヤホンつけて軽い気持ちで聴き始めたら、やりよったことがマジ手つかんぐらいシビれて。現場の歌なんですよね、この曲は。書いたのはちょうどイベントも中止ばっかりの時で、音楽イベントじゃなくても、学校行事とか他の催し事のイベントももちろんなくなったりとかしてて。そんな中でもいろんな葛藤がありながらも場所を提供してくれてたクラブもあって、遊びに来てくれるお客さんもいて。「今日は俺たちだけのParty」っていう歌詞にもあるように、そのイベントに関わってる人、遊びにきた人ってMEMBERS ONLYだなと思って。その時の想いが全部リリックに出てきてる感じですね。アルバムのタイトルにもしてるし、この曲はとにかく聴いてほしいですね。全曲聴いてほしいんですけど、MEMBERS ONLYは特に音楽やってた人はみんな聴いたら分かってくれるんじゃないかなっていうか、響くところが絶対あるだろうなと思うんですよね。

− NASUさんが福岡で出演してるレギュラーイベント「KARASHI BOX」のYouTubeチャンネルで始まった企画「N.O.R.I」がありますが、これは読み方は?

NASU:「ノリ」です。やってみる?ってノリで始まった企画なので

− そうなんですね(笑)「N.O.R.I」では今作のアルバムとは違う、ヒップホップのビートで歌うNASUさんが見れるものになってますね

NASU:一緒にやってるKENBEATはヒップホップのDJ兼ビートメーカーで。毎月あいつがビートを作って、毎月俺が歌詞書いて、毎月ビデオまで出してってできたらウケるねっていう会話のノリから始めた感じですね。3月から始めて、12月まで順調に公開できたら10曲で。その裏でもう10曲作って、20曲入りのアルバムを来年の頭に出せたらいいなって思ってます。

− 6月に出た最新曲の『Godzilla』はRZAっぽいアプローチのトラックでかっこいいですね

NASU:あの曲は、元プロ野球選手のゴジラ松井と誰かのインタビューの会話を聞きよる時に、それをボイスメモで録っとって、その声をトラックに忍ばしてるんですよ。本当のゴジラ松井の声が乗ってるから、タイトルが『Godzilla』。ノリですよね、完全に。

− ヒップホップといえば、今フリースタイルバトルがめちゃくちゃ流行ってますが「福岡のNASUといえばディージェイクラッシュ」という印象を持つ人も多いですよね。僕もその一人で、前回のインタビューの自己紹介でも「ディージェイクラッシュやバトルにも何度か出させてもらって、幾つかタイトルも獲らせてもらいました」と言っていたように、NASUさんのキャリアを語る上で欠かせない要素だと思うんですけど、そもそも始めたキッカケは何だったんですか?

NASU:うーん…… 純粋に街でそういうことをやってる人が多かったというか。20年前とかにクラブ行き始めて、当時高校生やし最初は怖いじゃないですか。それにその時代の親不孝通り(福岡市の繁華街)なんて特に治安が激しかったので。先輩も本当の親不孝者しかいないぐらいな感じだったけん、そんな中でステージでマイク握っててちょっとでもヘボかったら先輩がやってきてマイク奪われるなんて当たり前やったんですよ。県外からゲストが来てても、全然イケてなかったらマイクジャックなんてこともあったので。そんな中で生き残るためにはクラッシュを仕掛けるしかなかったというか。でも親不孝だけじゃなくて日本全国そうだったと思います。

− 激しい環境だったんですね。

NASU:例えばラバダブに10人いるじゃないですか、その中でマイク握れるのってほんの一握りで、握ったとしてもちょっとしか歌えないとか、はたまたワケ分からんやつだったら 1 回もマイク握れないとかあると思うんですけど。でもそこで喧嘩売ってしまえば、ある程度マイク握っておけるんですよ。

− なんて返すんだろう?って、お客さんも見てくれるし。

NASU:そうそう。そしたらまたそれに対しての返しがきてっていうので。だけん、名前を売るじゃないけど、そういう手段としてディージェイクラッシュを仕掛けるっていうのはどこの県でもあったはずです。今でいうサウンド同士の朝方のチューンフィチューンみたいな、そんな感覚に近いですよ。

− そうだったんですね。それこそ6月末に東京で開催された「渋谷レゲエ祭 vs 真ADRENALINE」のMCバトルにもレゲエ代表として出場しましたよね。あれは運営から話がきたんですか?

NASU:そうですね。実はその前に「フリースタイルダンジョン」のレゲエ対ヒップホップの企画の時も話はきてて、その時はちょうどスケジュールが合わなくて断っちゃったんですよ。そのことをすごい後悔してたので、今回は出場できてよかったです。

− 出場した率直な感想を聞いてもいいですか?

NASU:率直な感想ですか…… 悔しいですね。それしかないかな。言いたいことはもちろん山ほどあるんですけど、結局報われるのは 1 人しかいないんでね。でも楽しかったですよ。「MCバトル」っていう新しいジャンルが確立されたんだなっていうのがむちゃくちゃ分かりましたね。

− アルバムインタビューから話が逸れてしまいましたが、最後に読者の皆さんに一言お願いしてもいいですか?

NASU:今回のアルバムの中には、人間として生きてるんであれば必ず 1 曲は心に刺さる曲があると思います。たぶん刺さらなかったらそいつ人じゃないですね(笑) ってぐらい、本当に気持ち込めて作ったっていうことです。ぜひ聴いてください。

MEMBERS ONLY

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