Interview & Text by AKI
世代交代を続けながらサウンドシーンを牽引しているFUJIYAMA SOUNDで若手メンバーとして活躍しているSTAMP。今夏には半年間のジャマイカ長期滞在を経験し、4年振りだったという今回の滞在で感じたこれまでとの違いや、ジャマイカの生活で必要なもの、日本で活動する上での海外のシーンとの上手な向き合い方を聞かせてもらった。

− まずは簡単な経歴から教えてください。
STAMP:FUJIYAMAに加入する前は、地元の滋賀県でSTRONG BONZというサウンドを3人でやってました。3人とも目指してるサウンドがFUJIYAMAだったっていうのもあって、3人でFUJIYAMAが出たワールドクラッシュを見に行ったり、ダンスに行ったり。それからFUJIYAMAのそばで1回勉強したいなと思って、それを相方たちに伝えたらガンガンやってくれっていう感じで背中を押してくれて。それで愛知に引っ越して、半年ぐらい一緒にダンス付いて行って、それから正式に加入したいっていうのを伝えてメンバーになったっていう感じですね。
− SNS等でジャマイカ滞在中の映像を見ましたが、めちゃくちゃ田舎な、日本だと経験できないような環境で生活していましたよね。どうしてキングストンのような街ではなく、あの場所を選んだんですか?
STAMP:アレクサンドリアは元々ACURA君が住んでた場所で。BASS ODYSSEYの地元というのもあってセレクターはみんなその辺に住んでる状態なので、サウンドシステムを一から勉強しようと思って行った感じですね。

− たくさんのダンスでプレイしている印象だったんですが、ブッキングはどのように取っていったんですか?
STAMP:ジャマイカに着いたらまずはDAMIEN (BASS ODYSSEY) のところに挨拶に行って、週末にダンスがあるから付いてこいって言われて、それからは基本的に毎週末ODYSSEYに付いて行ってました。その時にタイミングで地元のバーとかで回させてもらって、そこでボスって個人のブッキングに繋げてたという感じですね。
− 初めてブッキングをもらったのはいつ頃だったんですか?
STAMP:最初にブッキングしてもらったのは2ヶ月目ぐらいかな。実は、行ってすぐの1〜2ヶ月ぐらいは政府からの門限があって遅くまでパーティーができてない状態だったんです。まあ、それでもみんな隠れてやってるんですけど(笑) それからコロナが収まってきて政府からダンス解禁の発表があって、発表を機にBASS ODYSSEYのサウンドシステムが動き出したんで、そこからは毎週トラックに乗ってダンスに付いて行ってプレイしてました。そこでのプレイを見たオーガナイザーやプロモーターが大きなイベントにブッキングしてくれだして、4ヶ月目ぐらいには正直貯金もキツくなってきてたんですけど、マニープロップやブッキングのギャラで生き延びることができました。

− 以前にもジャマイカに行ったことがあるとのことでしたが、その時と今回で変わったなと思うことはありましたか?
STAMP:前回行ったのは2018年なんですけど、当時と違うのは今はヒットチューンがTikTokから生まれるようになってます。スマホの普及率が圧倒的に上がってて高校生でも全員持ってるっていう感じなので、それの影響もあってかTikTokで10代とかハタチぐらいのアーティストがめちゃめちゃ出てきてます。ジャマイカでは40代の人も全然TikTokを使ってるので、そこでバズるとかなり認知されると思います。
− TikTokはどういう使い方をしているんですか?
STAMP:PVをちょっと載せるとか、サビの部分を使って「#○○Challenge」みたいな感じでダンサーに使ってもらったりです。Jada Kingdomの『GPP』も、最初はTik Tokだけでめっちゃ使われててリリースされてなかったんですよ。それでリリースされたら今やPVも300万回再生超えですもんね。こんな感じでヒットが生まれていってます。でも回転が早すぎて付いていけないって話もセレクター同士でよくしてました。ホットだと思ってかけたら反応が良くないこともありましたよ。ダンスホール以外だとブルックリンドリルがかなりかかってましたね。
− サウンドマンのプロモーション方法はどうですか?
STAMP:「JAMAICAN SOUND SYSTEMS」っていうサウンドのプレイをアップしてるYouTubeチャンネルがあって、僕も録ってもらったんですけど、それで見て「知ってるぞ!」って声かけられることは多かったですね。1時間とか録ってくれるし、動画にコメントもめっちゃついたりしていい宣伝になってくれました。このチャンネルはどっちかといったらキングストンじゃなくて田舎のパーティーの動画が多いんですけど、他にもそういうチャンネルがちょこちょこあります。それとキングストンのダンスが結構変わってたなっていうか、アップタウンだったらレストランとかラウンジでMC少なめのオシャレなパーティーが増えてるなって印象でした。チップとかも田舎とは全然違うでしょうし、そこに入り込むまでは大変だろうけど、そういうセレクターの形も今はあります。
− 海外を目指してる人に向けて、今から日本でも準備できることはありますか?
STAMP:言語の面だとボキャブラリーですかね、単語は知っておいて損はないと思います。あと僕は最初は田舎訛りのパトワが聞き取れなくて…… ルームメイトがラスタだったので聖書のことも教えてもらったりしながら2〜3ヶ月目ぐらいにやっと聞き取れるようになりました。
− 日本で想像してたよりも大変だったんですね。
STAMP:そうですね。生活費は月10万円もあれば不自由なく生活はできると思います。僕みたいに田舎に住んだり、1日1食とかにすればもっと抑えれますよ。あとは音源を聴いて、MCだったら言い回しとか、セレクターなら曲のかけ方をたくさん予習しておくと、実際にジャマイカで答え合わせというか、こういう時はこういうトークをした方がいいんだな、こういう選曲がいいんだなみたいなのを掴んでいけると思います。
− 現地でお世話になるジャマイカ人に日本からカップラーメンとかをお土産として持っていく人もいますよね?
STAMP:それはめっちゃ大事ですよ。そのおかげで普段から気にかけてくれたり、困った時に助けてくれたり。あとはダンスで酒買ったりとか、遊びに行く時に飯買ったりすると次第に「ボス」って呼ばれだします(笑) こっちは勉強させてもらってるつもりなんですけど「お前が金出して俺たちが楽しめてるから、お前がボスだよ」みたいな。
− 次の海外滞在で行きたい国はありますか?
STAMP:めっちゃあるんですけど、ジャマイカ以外のカリビアンコミュニティに行こうかなっていうので、マイアミは絶対行きたいなって思ってます。今回の滞在の課題として、もうちょっと長くいれたら良かったなと思っていて。実際に今も海外でのブッキングの連絡が来てるんですけど、日本に帰って来るとなかなか都合がつけれなくて…… アメリカにいながらジャマイカからのブッキングも受けていくみたいな感じで動いていけたらベストですね。
− 10年前とかはFUJIYAMAってほとんど海外で活動している印象だったんですけど、今は日本に拠点を置きながらメンバー各々が海外滞在で得た経験を反映させてますよね。やっぱり今は海外のスタイルをそのまま届けるより、一旦日本のやり方に落とし込んだ方が受け入れられやすいと思いますか?
STAMP:そうですね。特に今はコロナ禍でセレクターもダンスも減って、レゲエのイベントにお客さんが入ってない状態で、そもそも「レゲエってなんだろう?」っていう人もたくさんいると思うんですよ。そんな中でもオールジャンルのイベントにはお客さんがたくさん入ってるんですよね。その現状を見た時に、レゲエって分かりにくいなというか、海外のスタイルをそのまま届けるとかなりコアなものになってしまうなって思って。なのでまずは知らない人たちの入口になるように、レギュラーダンスには「サウンドシステムの楽しみ方」っていうあえてカタカナでキャッチーな名前をつけてみたり。イベントの内容も、海外で勉強したことをそのままやってみたいなという気持ちもあるんですけど、日本には日本のやり方、ジャマイカにはジャマイカのやり方があると思うので押しつけにならないように、バランスを取りながらやっています。
− 今の日本のレゲエシーンの課題の1つですね。
STAMP:ACURA君にも「10年前だったら好きなだけ海外行っていいよって言えるけど、今はジャマイカだけが正解じゃないし、海外で得たものをどうハイブリッドしていくかが大事だよね」ってよく言われていて。次はアメリカに行きたいなと思っているのはそういう背景もあります。でもやっぱりレゲエはブラックミュージックでありカリビアンミュージックなので、提示する側がそこのカルチャーをしっかり分かってないといけないなと思っていて。なのでこれからも海外長期滞在は続けていきたいし、そこで得たものを上手に届け続けてシーンを盛り上げていきたいなと思っています。
STAMP from FUJIYAMA

【Instagram】@stamp_fujiyama
【Twitter】@Stamp_Fujiyama