【インタビュー】CONVERSATION|HISATOMI × NATURAL WEAPON

提供:Pococha (DeNA)

Interview by AKI
Text by Umi Yamaguchi

パンデミックが終息しつつある昨今、世の中ではよく「生きづらさ」が語られるようになったと感じる。ここ数年で明白化した価値観の違いや格差を、それぞれが濁したり濁さなかったり。レベルミュージックに救いを乞いたくなるようなニュースばかりが目に留まり、ファミレスに行けば機械がご飯を運んでくる。それでも時間は平等に、私達を未来へと運ぶのだ。

停止していた時間が一気に加速したような2022年、そして迎えた2023年。アーティストは今、何を思うのか。

ようやく「現場」が確保できるようになってきている現在、BUZZLE MAGAZINEでは「現場以外での活動」にもフォーカスを当て、様々なアーティストによる対談形式のインタビューシリーズ「CONVERSATION」をスタート。アーティストにとってもリスナーにとっても、興味深い話がたっぷり詰まった各対談は必見だ。

連載第4弾のゲストは、ディージェイクラッシュ「COMBAT」での対戦も記憶に新しいアーティストHISATOMIとNATURAL WEAPON。無名の若手時代から数えきれないほどの共演を果たし、現在では互いにシーンを代表するアーティストとなった2人に、出会う前のお互いの印象から若手へのアドバイスまで幅広い話を繰り広げてもらった。

タフな環境をサバイブした若手時代

NATURAL WEAPON:覚えてます? 初めて会った時とか。

HISATOMI:実際に会って「はじめまして」みたいなのは正直覚えてなくて。NATURAL WEAPONっていう存在を知ったのは、Ten-gに通う若手の歌い手の子らで作ったデモCDが誰かから回ってきて聴いて、その中に1人だけ上手な子がおるなと思って「これ誰!?」ってなって、それがWEAPONで。強烈に刺さったのを覚えてるな。

Ten-g… 惜しまれつつも2015年に閉店した大阪のレゲエシーンを支えた伝説的クラブ

NATURAL WEAPON:そのデモCD、俺からしたらキャリアも1年ぐらい踏んでから作ってるやつやから、俺のほうが先に認識してるかもしれないですね。俺がひっさんを知った時はまだ改名前で、当時はまだHISATOMIじゃなくてKOH-SONSAN(旧アーティスト名)時代で、4人組のN-O2で活動してましたよね。俺らの地元のクラブに来る時は見に行ってたし、カエルスタジオ周りのイベントも出つつ、他のイベントにもゲストとして呼ばれたもりしてる、俺からしたら売れてる人っていうイメージでしたね。

HISATOMI:俺もまだ下積みのエピソード1みたいな時代やけど、大きめのイベントで歌うこともあったからWEAPONからはそう見えたのかもな。

NATURAL WEAPON:そうそう。俺はまだその前座とかやったから。

HISATOMI:今は無いかも知れへんけど、歌い手のファーストステップ「チケットさばきからの脱却」という時代(笑)

NATURAL WEAPON:そうですね(笑)

HISATOMI:友達に売りつけられへんかったら、身銭を切って買い取らないといけないという。

NATURAL WEAPON:そうそう。「チケット20枚売ったら、フライヤーに名前載せてイベント出したるわ」みたいな、そんな時代ですよね。

HISATOMI:そうやな。そういう下積み時代からクラブとかで何回も一緒になってるから、初対面っていうのはハッキリ覚えてないかな。でも今も残ってるというか、今もプロでやってるレゲエアーティストって同じ現場になることなんて何百回もあるから、関係は必然的に深くなっていくよな。

NATURAL WEAPON:確かに。同じホテルで宿泊とかも多いんで、自然とみんなの本名とかも覚えますよね(笑)

HISATOMI:地方のイベントに一緒にゲストで呼ばれたりすると、一緒に旅行行くみたいな感じやしな。イベントの打ち上げで飲んで仲良くなっていったり。

NATURAL WEAPON:そういう時は深くまで飲んだりして。沖縄でハブ酒飲んで喧嘩もしましたよね(笑)

HISATOMI:浜辺の殴り合い(笑)

HISATOMI & NATURAL WEAPON:(笑)

ディージェイクラッシュ「COMBAT」での闘い

NATURAL WEAPON:(対戦カードが決まった時は) どんな心境でした?

HISATOMI:なんか…… 安心というか(笑) クラッシュもエンターテイメントやから、WEAPONが相手やったら見てもらう人に面白いものを見せれるやろうなという安心感。だから二つ返事で「WEAPONやったらやりたいです」って受けた感じ。

NATURAL WEAPON:俺もシンプルに、HISATOMI vs NATURAL WEAPONは「なるほど、そうきたか。面白そうですね」っていう。

HISATOMI:俺の中では、野生的なタイプのWEAPONと、理論的なタイプの自分、みたいになるかなとも思った。

NATURAL WEAPON:実際、そんな感じになりましたしね。

HISATOMI:そうね。スタイルの違いというか、やり方の違いも見せれた。

NATURAL WEAPON:俺らの試合が「エンターテイメントとして1番面白かったな」って言われるようにしようという意識はお互いありましたよね。

NATURAL WEAPON:クラッシュ決まってからは、やっぱり喋りにくくなったりもしたけど、対戦1週間前ぐらいにサウナ行ったら1人だけ先客いて、それがひっさんで(笑)

HISATOMI:1週間後に向けて整え始めてたんかもしれんな(笑)

NATURAL WEAPON:あれは運命感じました(笑)

COMBAT DEEJAY CLASH… オフィシャルウェブサイト

パンデミックを機に配信活動をスタート

HISATOMI:COMBATの後ぐらいから(新型コロナウィルスの)パンデミックが始まって、自粛ムードになって。俺らみたいなクラブでライブをしてたアーティストとかは「マジでこれからどうなんの?」っていうぐらい仕事が無くなって。自分のことをプロモーションする方法は真剣に考えたかな。

NATURAL WEAPON:表に出る仕事やのに、表に出れなくなって。どんな形でもいいからとりあえず発信しないとっていう。でも、スタジオにも行けない状況になってたんで曲作りもできへんしっていう時に、なんかできひんかなっていうので、クラウドファンディングでオンラインライブを開催しようと思って。その配信の場所をYouTubeにして、それをそのままチャンネルとしてスタートさせましたね。

HISATOMI:俺もYouTubeを始めたんやけど、レゲエに特化したこととかっていうのはJUNIORくん (RED SPIDER) であったりとか、そういう人がやるほうが説得力もあると思って。じゃあ俺は何やろうかなって時に、料理とかキャンプも好きやから、最初は自分の作った料理を食べてるようなもんだけでもええかなと思って始めたんやけど、気づけば今はキャンプの専門チャンネルみたいになってる(笑)

NATURAL WEAPON:(笑)

HISATOMI:でも意外とキャンパーの人の視聴者さんも増えてくれて、キャンプブランドのイベントにも参加することになったり。俺とコラボレーションしたキャンプグッズの販売の話にも膨らんで。

NATURAL WEAPON:へー!そっちが膨らんで、膨らんだところがおいしかったみたいな。

HISATOMI:それに加えて、Pocochaも始めて。キッカケは三木さん(DOZAN11)の勧めで。

Pococha… ライブ配信と視聴ができるライブコミュニケーションアプリ

NATURAL WEAPON:実は俺にも「始めたら?」って電話きてました。俺は器用じゃないんで、いろんなことをやる余裕が無くて始められなかったんですけど。

HISATOMI:俺もアプリのインストールはしたけどそのまま止まってて。でも三木さんと一緒にライブさせてもらった時に、楽屋で「今始めろ」って言われて、ほぼ強制的にスタートしたみたいな(笑) Pocochaのシステムも、三木さんの配信から来たお客さんに教えてもらいながらやるみたいな感じで。RYO the SKYWALKERさんだったり、すでにPocochaをやってた人の配信からレゲエのお客さん(リスナー)が俺のところにも来てくれたから、やりやすかったかなと思う。

NATURAL WEAPONなるほど。サウンドとかだと曲をかけたりしてるじゃないですか。歌い手の場合はPocochaってどんな感じなんですか。

HISATOMI基本は喋ってて、1回の配信の30分くらいだけ俺の曲をかけたり。30分だと曲数は限られているからリクエスト貰って曲をかける感じで。

NATURAL WEAPONなるほど。映像付きのHISATOMIラジオって感じなんですか?

HISATOMI:オンライン飲み会みたいなイメージで、「今日ラーメン作り初めてさ」ぐらいの感じで(笑) 気軽にコミュニケーションが取るのにいいツールだと思う。

NATURAL WEAPONそれはファンからしたら嬉しいですね。Pocochaから現場のライブ来てくれることもあるんですか?

HISATOMI: それもあるよ。曲は知ってたけど現場は来たことがない人とか、Pocochaキッカケでライブ来てくれてドはまりしてくれた人とかもいる。Pocochaやってなかったら繋がらへんかった人もいると思う。

レゲエ好きは横の繋がりがデカい

HISATOMI:レゲエ好きって、横の繋がりがデカいというか。俺のだけじゃなくて、他のアーティストの配信も見てますって人は多いし、その繋がりのおかげで何もわからない時期は助けてもらえた。(現場での)ライブ無くなった時にはほぼ毎日やってたんやけど、ライブの収入に変わるぐらいマネタイズもできてたし。

NATURAL WEAPON:すごいですね。

HISATOMI:Pocochaは、毎日配信するとランクが維持できる仕組みで。俺みたいにできるだけ怠けたい人間にはある意味合ってたのかもしれない(笑) 配信者のランクがあって、それが上がっていくねんけど、上げてもらったのもリスナーさんの応援とかで上がってるわけやから、自分がなんもせんと落としてしまうと申し訳ないなっていう気持ちもあったりとか。

NATURAL WEAPON:なるほど。見てくれてる人からもらってるものやし。

HISATOMI:そうそう。今は現場のライブも増えたし俺は自分のちょうどいいぐらいのところでやってるけど、主婦の人でもお昼の空き時間でやってる人がおったりとか。それでも毎日やってればファンもつくみたいで、それで仕事になってるよっていう人もおったし。そういう意味では時代に合った仕事っていう感じはする。

NATURAL WEAPON:今はどれぐらいのペースでやってるんですか?

HISATOMI:今は週3〜4とかぐらいかな。

NATURAL WEAPON:1回やったら何時間ぐらいやるんですか?

HISATOMI:3時間ぐらい。最近は、パンデミックで行けてなかった地方にもまたライブで行ける機会が増えて、疎遠になってたからお客さんが来てくれるかなとか不安になる時もあるけど、そういう時はPocochaにいつもいてる人たちに「会いに来て」って呼びかけたりするのにも使ったりしてる。

NATURAL WEAPON:いいですね、密なファンって感じ。生配信ならではのリアルな声を届けれてるというか。

HISATOMI:そうするとコメントでも「なんかお土産買っていきますよ!」みたいなのをもらって。そこで俺も「甘いもの好きじゃないから、おつまみとか酒がいいな」とか言って(笑)

NATURAL WEAPON:友達やん、もう(笑)

時代と共に変化する表現方法

HISATOMI:今ってどんだけ個性を出すかというか、セルフプロデュース能力とか、自分で発信する力を磨くのも大事なんかなと思ってて。おっさんの俺からしたら、若い子のSNSでの自分の見せ方とかすごいと思うな。

NATURAL WEAPON:そうですね。昔は曲をリリースするだけですごかったし、そこいくまでの過程がけっこうデカかったですけど、今はリリースも家でできちゃうし、ミュージックビデオも頑張れば作れるし、そのための宣伝も全部1人でできちゃう時代で。そうなるとSNSとかで個性を出していくのが大事になっていくのかもしれないですね。

HISATOMI:当たり前にSNSがあった10代を過ごしてきた子らが20代になって、新世代として今の時代に合った攻め方をしてほしいと思うよな。SNSとかから売れる人ってレゲエ界ではまだ少ないのかもしれないけど、そういうのを使って目立っていってほしい。昔より教科書になるもんが多すぎてディージェイとしては上手い子らばっかで、それだけじゃ出にくいというか、目立ちにくいというか。

NATURAL WEAPON:歌上手くて、ライブして、リリースしてっていうのはもう普通ですもんね。

HISATOMI:それプラス、人によってYouTubeで話題になったり、TikTokがバズったり、Instagramでファッションで注目されて売れるとかもあり得るしな。

NATURAL WEAPON:今から何かを始めようとしてる若い子に俺からアドバイスするとしたら、YouTubeだったりPocochaだったり、形がどうであれ人の前に出て表現できる場があるなら、ひとつでも多くやって、どんどん発信してみたらいいと思いますね。「アレは良くて、これはダサい」とか気にせず。自分でカッコよく変えていったらいいし。

HISATOMI:いい曲を書くとか、そんなことは当たり前で。そこの練習とか勉強は欠かさずやった方がいいと思うけど、音楽だけやってりゃいいってわけでもないかもしれんな、個性を出すためにも。それを見つけるのも難しいのかもしれないけど…… キャンプに行ったほうがいいと思います(笑)

NATURAL WEAPON:それは人それぞれで(笑) あと最後に告知なんですけど、ガンガリーキッチンっていうジャマイカンフードのテイクアウトとキッチンカーのお店を最近オープンしたんで、みなさんチェックお願いします。

HISATOMI

大阪を拠点に全国区の活躍をするレゲエアーティスト。
等身大のリアルかつ、独特の言葉選びと遊びにこだわったリリックに抜群の安定感ある歌唱力を兼備える実力派 REGGAE DEE JAY。

2013年8月、1stアルバム『ヒのサのトのミ』をリリース、
同年iTunesレゲエアルバム部門 1 位を獲得、2011年に配信された収録シングル [STAY WITH ME] はREGGAE ZIONで10週連続 1 位を樹立し同年のREGGAE ZION新人賞を受賞。
同年12月にSOUTH YARD MUZIKからリリースされた [MY DREAMI] はYouTubeのPV再生回数が現在約300万回再生!!!
2014年9月、2ndアルバム『NO PROBLEM MAN (Village Again/ROCKERS ISLAND)』をリリース、
2015年2月には寿君とNIKOICHI GOLDEN TAGを組み全国6箇所ツアーを敢行。延べ3000人の集客を記録。2015年、3rdアルバム『MADE in ISLAND (Village Again/ROCKERS ISLAND)』をリリース。
収録シングル [今日という日に][RIDDIM JACK feat.RAY][スポットライト] などの先行配信曲がiTunesレゲエチャート 1 位を獲得。

2016年も主要都市4箇所で開催した初のワンマンツアー「JACK YOUR CITY」を成功させる。
2016年6月コンセプトアルバム『哀愁愛集 (Village Again/ROCKERS ISLAND)』リリース。iTunes、レゲエZION、TSUTAYAにてレゲエアルバムチャート1位を獲得。
同年12月、東京・渋谷Glad にて開催されたワンマンライブでは満員の会場を魅了し成功を収める。
【Instagram】@hisatomi1983
【Twitter】@Hisatomi1983
【Pococha】HISATOMI

NATURAL WEAPON

地元大阪を中心に20年近くものキャリアを重ねた、日本を代表する実力派のレゲエ・ディージェイ。
全国屈指のレゲエ・タウンである大阪・泉州に生まれ育ち、’03年に若干18歳でMIC握り始める。’04年に初めてジャマイカに訪れ、本場のレゲエに衝撃を受け本格始動。するとすぐさまその才能を開花させ、 “GHETTO PRINCE” の異名と共に期待の若手アーティストとしてシーンの注目を集めだした。
‘06年頃より全国のレーベルからリリースを重ね、’08年には自身初となるフル・アルバム『GHETTO PRINCE』をリリース。リリースツアー『21 bullet』と題し、全国ツアーを敢行。’10年には2ndアルバム『WHO COME!?』をリリースすると共に、自身のさらなるスキルアップを求めてジャマイカでの長期修行の道を選ぶ。現地では首都キングストンのゲットー、シービューガーデンにて、時同じくしてジャマイカに身を置き長期修行を行なっていた盟友、CHEHONと共にレギュラーダンスを主催するなど精力的に活動。帰国後の’12年には3rdアルバムとなる『JUST REACH』、’15年には4thアルバム『Di NATURAL』を発表するなどコンスタントにリリースを重ねる。’17年、カエルスタジオに加入し、RED SPIDERの47都道府県ツアーに同行。’19年に全曲RED SPIDERプロデュースのミニ・アルバム「WEAPON GO」を発表。
馬鹿正直なほどまっすぐなリリックと、時には鋭く、時に甘いフローを持ち味に、ダンスホールからワンドロップまでオールマイティに歌い上げるスキルは超一級品。また一曲の中で物語の豊かに描写するライティング能力にも定評があり、客演アーティストとしての活躍もよく知られる。特にTAK-Zとの「祭りのあと」、「あとの祭り」の2曲は’10年代のレゲエ・シーンを代表するラブソングとして語り継がれている。また’20年にRED SPIDERと共に制作した楽曲「家族」は親子の心情と情景を等身大に描き、今も多くのファンの心を掴んで離さない。
いわゆる正統派のレゲエ・ディージェイとして、シーンへの登場以来、数々のアーティストの手本になる存在として活躍を続け、APOLLOや775を始め、その影響を公言する者は今も後を絶たない。

【Website】NATURAL WEAPON
【Instagram】@weapon0724
【Twitter】@weaponm_w

GANGALEE KITCHEN

営業時間:16:00〜23:00
定休日:水曜日
住所:590-0526 大阪府泉南市男里3-6-13

【Website】GANGALEE KITCHEN

オフィシャルTwitterで最新情報をチェック!