【インタビュー】HIBIKILLA『KillerTune』| リバースして再生

2023年ダンスホール最大のヒットとなったByron Messiaの『Talibans』と同リディムを使用した『WAGMI』のリリースや、NFTと音楽を交差させ世に放つなど、時代の最先端を進むアーティストHIBIKILLA。ここ数年の社会の陰りを背負い「再生」をテーマに12年ぶりとなる待望のアルバム『KillerTune』をリリース。彼の独自の哲学と音楽に込められた想いに迫る。

− 12年ぶりのアルバムのリリースですね!おめでとうございます。今回アルバム『KillerTune』制作に至った経緯を教えてください。

HIBIKILLA:元々アルバムを今年中に出す予定はなかったんですが、新しい環境がかなり後押ししてくれた感じで。というのも、今年の4月に埼玉県入間市に引っ越してきまして。人口10万人ちょっとの郊外の町なんですよね。東京と比べるとのんびりした場所で、最初は知り合いもいないし、すごい所に来てしまったと思ってたんですが。

− 引っ越し先の新しい環境がキッカケになったんですね。

HIBIKILLA:その町で、ONODUBさんっていうエンジニアの方が自宅を改造したスタジオを持っていたんですよ。すごくいい環境のスタジオで。そのONODUBさんの協力の元、大半の作業を進めることができたんですよね。また、後から分かったことなんですが実は音楽やアパレルのカルチャーが根付いてて。かつては細野晴臣さんとか音楽の業界の方も集まっていた場所でもあったということを知りまして。今でもそこにアパレルの人もいれば、音楽している人もいるっていう感じで、そういう繋がりもできてきて。すごくやりやすくて、4月に引っ越してから8月までにレコーディングを全部終わらせて。それでアルバムのリリースに追いつけたという感じですね。

− 来るべくして来た環境って感じですね。

HIBIKILLA:そうですね。なんだんかんだ環境が後押ししてくれて。あとは『WAGMI』って曲を2022年に作ったんですが、たまたま同じオケのByron Messiaの『Talibans』って曲が今年大ヒットしたじゃないですか。なので出すなら今年出したほうがインパクトあるなと思って。

WAGMIの先取りには驚かされました。今回のアルバムに新曲は何曲収録されていますか?

HIBIKILLA:5曲が新しい曲になります。新曲以外も『Progress』や『Wha Gwaan Midnight』はアルバムミックスで収録しています。『Luna』,『Slo Down』もリミックスですね。

− 制作期間が4ヶ月ということは月に1曲ペース。かなり速いスピードですよね。

HIBIKILLA:ONODUBさんがアーティストにとって作りやすいようにサポートしてくれるエンジニアさんなので、周りの協力もありスイスイ作れましたね。

テーマはダブルミーニングで「再生

− 今回のアルバムのこだわりポイントを教えてもらえますか?

HIBIKILLA:今のジャマイカのダンスホールやレゲエを聴き込んでいる人ならわかると思いますが、サブジャンルが細分化されてきている。トラップダンスホール勢がいる一方で、Protoje, Koffee, Blvk H3ro, Nation Bossとかメッセージ性の強いラスタだけどルーツレゲエじゃなくてダンスホールの中で表現しているアーティストも多い。そこに近いサウンドを意識しました。

− 確かに全体を通して、レゲエやルーツというよりダンスホールやアフロビーツのサウンドが中心となっていますよね。メッセージとしてのアルバムのテーマをお聞きしてもいいですか?

HIBIKILLA:1曲目の『Neuromancer』っていう曲がけっこう象徴しているんですけど、ここ数年でコロナや戦争、自然災害があったり大変な状況だったじゃないですか。なので2023年は仕切り直していくぞと。そういう想いを持っている人が多いと思ったので「再生」っていうのをテーマにしています。

−「リバースして再生」っていうフレーズが出てきますよね

HIBIKILLA:再生っていうのがダブルミーニングになっていて。音楽を再生することと、死者の魂が生き返るっていう意味ですね。「リバース」もカタカナ英語を活かしたダブルミーニングになっていて、巻き戻してコマゲンみたいな意味でのreverseと、生まれ変わるって意味でのrebirth。個人的にも久しぶりのアルバムであり、まさにリバースして再生するぞという気持ちを込めています。

− なるほど。社会情勢もご自身の状況もテーマに含まれているんですね。前作の『Freedom Blues』もそうだと思うんですが、Hibikillaさんの楽曲はその時代が反映されていると思います。

HIBIKILLA:時代を反映することは意識してて。Big Youthっていうベテランのディージェイがいて、a.k.a. Human Gleanerって呼ばれているんですが、つまり人間の新聞みたいという意味。昔からレゲエディージェイの伝統芸としては、時代の出来事をリリックに落とし込んで盛り上げるっていうのがあって。僕自身もそういうスタイルが好きなので、意識しているところはありますね。

− スタイルに取り入れる上で気をつけていることはありますか?

HIBIKILLA:ニュースを伝えるんだけど、伝え方にはちょっとコツがあるというか。活動家の言葉にはしたくなくて、どっちとしても捉えられるようにしたい。例えば戦争反対とか原発反対とか、それをそのまま言っちゃうとアーティストの言葉じゃなくて活動家の言葉になってしまう。そこって逆に共感を生まないというか、お前は反対派だったら俺は賛成派だねっていう人には伝わらなくなってしまう。そこはなるべくアーティストの言葉に落とし込みたいっていうのがあって。
例えば「何が最悪の事態 それは何も変わらないこと」っていう言葉だったりとか、「くだらない人生かもしれないね でもどうか笑わないで」みたいなリリックは、別に原発反対とも言ってないしドラッグ反対とも言ってないわけですよ。

− 聞き手に考える余白を与えることができる表現ですよね。押し付けじゃないというか。

HIBIKILLA:そうですね。やっぱり自分がライブやるにしても、いろんな属性の人が来るから。そこには人種も性別もいろんな人が来るわけじゃないですか。最近のジャニーズ問題もそうだけど。あれを性搾取やめろって言い方ならみんな上がるかもしれないけど。同性愛者なんちゃらって言うと伝わるものも伝わらなくなる。本質を捉えないとインクルーシブにはならないかなと。

故郷を守りたい

− DABOさんとの楽曲『この世界』もアルバムに収録されていますね。この曲の制作について聞かせてもらえますか?

HIBIKILLA:この曲は息子が生まれたときに書いた曲なんだけど、その生命の力強さっていうものを歌にしてて。たまたまそのタイミングでDABOさんのところもお子さんが生まれて。そこの想いに共感をしてくれて一緒に作りました。実は、オケをもらってから1年ぐらいあーでもないこーでもないって時間をかけた曲で、自分にしては珍しく時間がかかった曲ではあるんすけどね。

− 時間かかったっていうのは、曲への想いが強かったからですか?

HIBIKILLA:それもあると思うんですが、単純にオケもすごいかっこいい曲だから、大きなテーマを歌おうって思って。今の時代、レゲエのリディムもDuckとかPunnanyとかみたいな感じのってあんまりなくて、ある程度コード進行も複雑なものが多くなってて。こういうかっこいいオケには、やっぱりかっこいい歌詞を乗せないととハマらないないよねっていう時代にはなってきてるかなと。あのオケにお笑いネタを乗っけようとは思わないじゃないですか。まあ、MOYA-Cはめちゃ下ネタで乗せたけどね(笑)

− 確かにオケも歌詞も壮大ですよね。この曲の中で「この世界を守っていけるのか?」っていう歌詞がありますが、HIBIKILLAさんの残したい世界ってどんな世界ですか?

HIBIKILLA:いやー、難しいよね、これは。自分の故郷とか、そういう言い方をするのが適当なのかなとは思うんですけど。例えば、戦争反対と言ってもそのあり方として二通りが考えられる。とにかく人命が大切という人と、戦争には反対だけれども侵略者とは戦うっていう気持ちの人の二通りだと思っていて。どちらが良いとか悪いとかじゃないと思うんです。自分の子供が誕生した時の歌なんだけれども、今の混沌な時代だとそういうことも考えていかなくちゃいけないなと。自分としては故郷を守りたいという気持ちがある。

− 他にも特にメッセージ性を意識した楽曲はありますか?

HIBIKILLA:『そして人生が始まる』とか、わかりやすいかなと思っています。落ち込んでばかりいられないよっていうのがテーマなんだけど。夜が来て、また朝が来て目が覚めたら、感謝の気持ちで生き返ったつもりでというか。寝て起きるっていうのが一つのリセットになるわけで。くよくよせずに次に進んでいくっていう、人生で大切なメッセージかなと思って。やっぱり自分も人生順風満帆ではない時もあるので、その時こそ思いますね。

− 個人的には、シングルカットにもなった『Yohaku&Sentence』が特に好きです。featのKOTAさんもすごく良くて。

HIBIKILLA:とりあえずKOTAがめちゃくちゃいいよね(笑) 彼は24歳のシンガーで、ジャンルで言えばヒップホップやR&Bっていうところになるんだけど、レゲエのバックボーンも持ってて。実はMINMIさんの付き人的なこともやっていたみたいで、レゲエやダンスホールマナーの曲もいけちゃうんですよ。

− そうだったんですね! 知りませんでした。

HIBIKILLA:TikTokで流行った『DIE』って曲がすごくいい曲で。ライブも見に行ってお話をさせていただいたら、僕のことも昔から聴いてくれていたみたいで。そこで曲やろうよってことになって、半年ぐらいかけて上手くまとまりました。若い才能と一緒にやったっていうこともあるんだけど、今風のサウンドに仕上がったなと思ってます。

− ベテランと次世代のコラボになりますが、どういったテーマで仕上げたんでしょうか。

HIBIKILLA:Noaki Souまたの名をNOAKさんっていうフォトグラファーやアーティストをしてる方がいます。彼がやっている「Yohaku&Sentence」っていうデジタルアートコレクションがあって、それを見てインスピレーションを感じて作った曲です。自分の歌詞を聴いてもらえればわかるんだけど、クラブの夜の感じというか、ただ楽しいだけじゃなくてエモさというか、そういうところを表現した曲になりますね。自分はパーティーとか女の子について語ってるんだけど、逆にKOTA君はまさに若い情熱、向上していきたいって歌っている。そこのコントラストもすごく面白いですよね。同じ場所にいるけど違うことを2人で歌ってるみたいな所もクラブの感じが出ている気がして、パーティーだけど楽しいだけでもないというか。アルバムからシングルカットっていうことで、ぜひぜひ聴いてください。

レゲエが間違いないと胸張って言える状況に

− 作品全体を通してHIBIKILLAさんの世界観とか哲学が垣間見えて。普通とは違うというか、HIBIKILLAさん独特の価値観を持つようになったキッカケなどはありますか?

HIBIKILLA:んー… かなり難しいですが、ひとつはおじいちゃんが仏教の人だったんですね。僧侶ではないんですが、信仰していてお経を読む時間があったんです。なので物心つく頃から仏教思想に触れていたっていうのはあるかな。他だと、レゲエを聴き出してからはラスタファリの思想に触れて、そこは大いにあるかなと思う。逆に自分としては普通なことだからあまり違いが分からないんだけど(笑)

− 自分もかなり抽象的で解像度低いまま質問してしまっていますが、世界の物事を自分事として捉えるのが上手いというか。

HIBIKILLA:確かにそうかもね。そう言っていただけるとすごい嬉しいことなんだけど。リップルエフェクトっていうか、自分のやっていることが世界に影響を及ぼすし、その世界の情勢は自分に影響を及ぼすし、自分自身がいい行いをすることで世の中にいい影響を与えられるかもしれない、というのは思っているかもね。そういった意味では自分自身への信頼だけはすごいあるというか(笑) そういう部分は人一倍強いかも。

−自分自身が社会に与える影響が強いと思うからこそ世界を自分ごと化できるんでしょうね。それこそ仏教的かもしれませんね。

HIBIKILLA:仏教の考え方だと、自分も自然や宇宙の一部っていう考え方ですからね。

− 今回のアルバム収録曲からミュージックビデオをリリースする予定はありますか?

HIBIKILLA:YouTubeなどで「そして人生が始まる」のMVが公開されています。大阪在住の、愛は0秒天使弾道ミサイル監督に撮ってもらいました。ストイックな映像美のある作品になっているのでぜひチェックしてほしい。

− 今後の展望も聞かせてもらえますか?

HIBIKILLA:自分の活動はもちろん活発化していくし、色々なジャンルのクリエイターさんとコラボしていきたい。手始めにリミックスコンテストを開催するから「そして人生が始まる」のアカペラをゲットしてほしいです。

https://twitter.com/hibikilla30/status/1720205207324516774

− それでは最後に、BUZZLE MAGAZINEを見てくれているレゲエファンの皆さんに一言よろしくお願いします。

HIBIKILLA:やっぱりダンスホール、レゲエが一時期よりは勢いがないように感じられるけれど、最近はASOUNDとかYouth of Roots、ZENDAMANとか若いアーティストの活躍が見えるようになってきた。それに自分たちやさらに上の世代もまだまだやっているわけで、この動きが芯食ったものになれば、ちゃんとまた盛り上がってくると思います。レゲエが最高!間違いないんだぞ!と胸張って言える状況がまた来ると思うので、頑張りたいなと思いますね。またここからいきますよ。

KillerTune

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KillerTune – Hibikilla

KillerTune リリースパーティ

HIBIKILLA KillerTune RELEASE PARTY
日程:11月18日(土)
会場:CLUB CACTUS

HIBIKILLA

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